中小企業が日本の活力源
日本商工会議所山口会頭 三条、燕産地を視察
日本商工会議所の山口信夫会頭(旭化成(株)会長)が10月23日、新潟県を訪れ、三条、燕産地の製造業2社を視察した。分刻みのスケジュールの中、工場視察、懇談会を開き、厳しい産地の声を聞いた。山口会頭は「空洞化のスピードは早いが何とか解決するまで頑張ってほしい。中小企業のダイナミズムこそ重要だ」と激励した。
(社)新潟県商工会議所連合会(上原明会頭)が開いた北陸信越ブロック商工会議所会頭会議に出席するため来県したもので、会議の始まる午後3時までを利用して視察が行われた。昼には三条、燕両商工会議所会頭、業界団体との昼食懇談会も開かれた。
山口会頭の地域視察は、1月の東大阪地域に続いて2度目。
日商では、コスト削減のために国内製造業の多くが、中国へと生産拠点を移していることで、急速に空洞化が進んでいることを憂慮。技術立国日本を立て直そうと、中小製造業の活性化、競争力強化に力を入れている。
今年2月には、地域産業空洞化問題特別委員会を設置。三条商工会議所の渡辺勝利会頭、燕商工会議所の小柳孝礼副会頭も委員となり、検討を重ねている。
今回の視察は来県に合わせ、日本のものづくり産地を代表する三条、燕産地を視察し、各地の地場産業の現状や課題を認識する目的もあると見られる。
昼食懇談会は、燕市井土巻三、燕三条ワシントンホテルで開かれ、渡辺三条商工会議所会頭、高橋作衛燕商工会議所会頭はじめ両会議所副会頭、両産地の業界団体の代表が顔を揃えた。
山口会頭は「日商では、小泉首相の中・長期的な改革には賛成。ただし当面のデフレ対策、景気浮揚対策に全力をあげて取り組むことが前提だと、一貫して訴えてきた。中小企業の苦労を和らげることが我々の活動の中心。国をあげて製造業を守ることが大事」と日本の景気回復に中小企業の活性化が欠かせないと主張。
「製造業が非常に厳しい環境に置かれ、風当たりも強い。空洞化問題には頭を痛めている。日本は資源のない加工貿易の国。海外に生産を移して企業の経営が成り立っても国としては成り立たない。健康な日本を創造するためには、中小企業のダイナミズムこそ重要」と強調した。
〜永久ではない中国〜
企業視察では、午前中に作業工具製造、三条市塚野目、トップ工業(株)(渡辺一郎社長)、午後から金属洋食器製造の燕市南五、小林工業(株)(小林貞夫社長)の2社をそれぞれ40分ずつ訪問。
午前10時45分、山口会頭、上原新潟県商工会議所連合会会頭らはトップ工業に到着。渡辺社長が三条産地の産業の特長や会社の沿革などを説明し、工場へ。モンキーレンチ、ラチェットレンチ、ペンチなど作業工具の製造工程を見学した。
渡辺社長は、平成3年以後売り上げが落ち込んでいる、公共工事の削減で建設業関連が不振、市場が小さくなった中での輸入品との競争で状況は厳しさを増している一方、多品種、小ロットでコストがかかっていることなどを説明。
「コストは克服しなければならない最低条件。対応しなければ生き残れない。国内外に関わらず、差別化が最大の課題。高品質、消費者のニーズを的確にとらえ、早く製品化に結び付けようと動いている。作業工具の総合メーカーとして、研究開発型企業を目指し、我が社のブランドが信頼されるよう進めていく」と述べた。
山口会頭は、商品化されているアルミ製の工具や試作品のマグネシウム製の工具を手に取り、「ずいぶん軽い」と驚いた様子で、強度、コストについて質問していた。
懇談会をはさんで午後0時55分から、小林工業へ。小林社長が燕産地産業の成り立ちや特長、同社の沿革などを説明した後、生産ラインを工程順に見学した。
小林社長は「状況は厳しいが思いを込めて作ることが、いかにお客に伝わるか実感している。当社でできることは職人気質を守った製品づくり」と、国内産の金属洋食器へのこだわりを伝えた。
引き続き同社で記者会見が開かれ、山口会頭が初めて訪れた三条市、燕市の産業の感想を語った。
山口会頭は「中国や外国との関係で大変な苦労をしている。流れは中国に向かっているが永久に続くわけではない」とエール。
「全体の地域産業の空洞化を緩めて、残してもらわなくてはならないものは残す。日本各地の地域産業が頑張ってもらうことで健康な国となる。伝統を守り、良い点を残し、競争できる条件を整えるのは企業だけでなく国の責任。伝統ある歴史を受け継いでいくような環境をつくっていかなくてはならない。中小企業が活力を持つことが日本の活力になる。空洞化のスピードは早いが、何とか解決するまでに各地の産業に頑張ってもらいたい」と踏ん張りを求めた。
(斎藤)