平成12年4月の介護保険導入後、新サービスとしてスタートした介護タクシー。要介護認定を受けた人を対象に、通院介助はもちろん、排泄、病院内介助といった介護にかかわるさまざまなサービスを提供している。

 利用料は、介護保険自己負担分の1割の金額で、30分以内の通院介助の場合、210円。

 しかし、厚生労働省が、来年4月から、介護タクシーにかかわるサービスの介護報酬の引き下げを決めたことで、利用者の負担が増すことになりそうだ。

 新潟県三条市東三条1、日の丸観光タクシー(株)の西山斉社長は、「タクシー業界の締め出しを狙っている」、同県燕市道金、(株)中央タクシーの阿部傳社長は、「介護保険絡みで民間の締め出しを狙う、言わば職業差別があるのではないか。介護報酬が引き下げられれば、現状のようなサービスは提供できないだろう」と懸念している。



〜利用者には不可欠〜

 介護タクシーは、病院に定期的に通う高齢者や、腎臓病を患い、人工透析のために通う人たちなどが利用している。タクシー会社は、訪問介護の事業者指定を受け、ホームヘルパーの資格を持ったタクシー運転手がサービスを提供しなければならない。

 介護タクシーのサービスは、移送に加え、例えば、家の中でのおむつ交換といった着替え、ベッドから車椅子などへの移乗、家の中からタクシーへの移動、病院内での移動や受け付けの介助まで含まれる。

 そもそも、介護保険制度は、移送サービスを排除している。厚生労働省は、「家からタクシーに乗せるまでと、車から降ろして窓口まで連れていくサービスは介護報酬を支給できるが、運転中は、運転に専念するため介護を行い得ず、介護報酬は支給できない」という見解を示している。

 これに対し阿部社長は、「介護保険導入の時に、国は、移送の重要性を念頭に置いていなかったのだろう。しかし、定期運行バスのようなものではなく、小回りの利く介護タクシーサービスが出てくるのは必然の結果だ」という。

 介護タクシーの場合、移送という保険外サービスと、介護という保険内サービスに一連性があるため、厚生労働省も、30分未満の身体介護1回として報酬算定している。このことから、介護タクシーは、介護保険を利用して、運賃無料で客を移送するという形態を取っている。身体介護の報酬は、30分未満で2100円。利用者負担は、サービス費用の1割だから210円。現在、通常のタクシー初乗り料金は、新潟県の場合、新潟市とその周辺を除き、610円だから、介護タクシー利用料金は、初乗り料金の半額以下。利用者にとって、安くて便利な上、タクシー会社にとっても、確実に利用が見込め、大きな魅力となっている。


〜行政対応も必要〜

 日の丸観光タクシー、中央タクシーとも、介護報酬による介護タクシーサービスを始めたのは、平成13年1月からだが、当初は、月に100件ほどの利用だったのが、2年弱経った現在、10倍から20倍ほどの利用がある。

 サービスも浸透し、利用者が急増している介護タクシーだが、来年4月から、利用料が高くなりそうだ。

 厚生労働省は、「事業者が運賃分まで介護報酬で賄っているのは報酬が高すぎるからだ」「身体介護は複数のサービスを提供しなければならないのに、介護タクシーは通院に特化しており、違法性が強い」などの理由で、乗り降りの介助を身体介護から分離させて、報酬引き下げを行うことを決めた。年末にも、新価格が決まり、4月から実施する。

 これに対し、西山社長は、「介護報酬が高いというのは、実際にサービスを提供している私どもからすると、ありえない判断だ。また、この算定は、タクシーを家まで運転する費用と、所定の場所に送り届けて会社に戻ってくるまでの費用も念頭に入れてあるのではないか。もし、介護タクシーの費用が高いのなら、ほかの介護サービスの設定はどうなっているのかを問いたい」と主張。

 サービスが通院に特化しているという理由についても、「介護タクシーが始まった当初から、厚労省から問題視されていた。それが嫌で、私どもの場合、ヘルパー専門の女性スタッフがおり、訪問介護全般のサービスを提供できるシステムを取っている。また、特化するのが問題だという判断も、納得がいかない。通院介助に特化し、満足いただけるサービスを提供するのも重要な役割だ。これまでのノウハウを持つ、乗り降り介助サービスのスペシャリストの方が、安心して利用できる面もある」とする。

 今後の介護サービスの動向について、西山社長は、「もし、介護報酬が下がれば、利用者負担は増すだろう。市や町が、それを補うなど独自の事業を検討する必要があるのではないか」としている。

 阿部社長も、「現状のサービスを維持するために、介護タクシーのようなサービスをどこかが代わりに行う必要がある。これまでのサービスでは、タクシー会社だから小回りが利くし、送り迎えも、ずっと病院で待たずに、ほかの仕事をすることができた。ヘルパーさんだったら、ずっと付き添わなければならない。余計に利用者の負担が増すことにならないだろうか。もし、市や町など自治体がサービスを行うことになれば、合併が問題となっている中で、各自治体の足並みをそろえる必要があるだろう」としている。            
                                                (三浦)
利用者負担増の懸念
ゆれる介護タクシー