ベテラン職人が直に指導
三条工業会中心で後継者育成
 (協)三条工業会(斎藤弘文理事長)は、三条市と三条商工会議所との共催で、今年度から、伝統地場産業後継者育成事業を開講した。

 ほとんどの作業工程が機械化される中、熟練の技を持つ鍛冶職人が、直接、若手を指導することで、三条市の産業の根幹とも言える「鍛冶」が継承され、さらに発展すればと力を入れる。

 同事業は、「本格的に、鍛冶屋の後継者を育てよう」と、国の補助を受け、三条工業会が中心となって行うもの。

 平成9年から12年まで、市と商議所が行っていた「鍛冶アカデミー」のように、「鍛冶屋」だけでなく「金物屋」なども参加していたものと全く違い、実際に鍛冶の現場で働く若手を対象に絞り、3年のカリキュラムを予定している。

 昨年10月20日と21日の2日間、三条・燕地域リサーチコアで行われた、第2回全国刃物サミットで、「伝統技術を継承しよう」といった内容が宣言文に盛り込まれていたこともあり、市も積極的に取り組んだ。

意気込み語る指導者ら 岩崎重義さんを座長とした、10人ほどの「鍛冶屋」から構成される検討委員会を開き、伝統技術を伝えるため、対象を「実際に現場にいる人で、なおかつ向上心、意欲のある人」に限定し、すべてのカリキュラムを手作業とした。

 市では、「手作業は基本。今は、ほとんど機械化されており、自分の担当部分しか分からない人も多いのではないだろうか。手作業の技術を習得することで、一連の作業工程の意味などが分かると思う」とし、「まだ機械化されていなかった時代は、若手は親方など職人の技を見て勉強した。しかし、今はそれも難しい。会社で教えることも難しいだろう。そういった部分を、ここで学んでほしい」と話す。

 8月6日午後6時から、三条市金子新田、(株)山村製作所内の三条鍛冶道場講義室で、開講式が行われた。式には、書類選考で選ばれた10人の受講生をはじめ、木宮隆三条工業会副理事長、高橋一夫三条市長、渡辺勝利三条商工会議所会頭、熟練の技を持つ指導者が出席した。

 木宮副理事長は、現在のものづくりを取り巻く状況などに触れ、「ディスカウンターの世界では、数の論理がまかり通っているが、これからは価値の論理が通っていくのではないだろうか。この3年のカリキュラムの中で技を磨いてほしい。本物が見失われがちな世の中だが、『いいものはいい』と言われるようにしたい」と話した。

 高橋市長は、「今、日本は『工場立国』と言われ、新しいものを生み出すことが出来ず、量産するしか能がない社会になってきた。本来のものづくりの『技術立国』を目指さないとダメになる。量産ではなく、本物を作ってほしい。受講生には、3年かけて、いろいろなものができる鍛冶屋になってほしい」とし、渡辺会頭も「忘れられかけているものづくりの喜びが、伝統として残っていくと思う。地味な中で大変かと思うが、それも使った人の感謝の心で消えるだろう」とエールを送った。

 その後、小林由夫さんら指導者が意気込みを語り、受講生も志望動機などを述べ、双方とも決意を新たにした。

 カリキュラムは「手の技」をしっかりと習得することを中心に反復訓練などを繰り返し、徹底的に基礎を勉強する。

 月2回、午後6時から3時間ほど、鍛冶道場で行い、課題なども出す。

 今後、専門分野などに分かれ、3年後の継続も視野に入れている。

 市では、「ここでは、技術を教えるのであって、それを生かし、どのような品物を作るかは、それぞれの受講生が考えること。機械は機械でいい。機械で作れない特注品が来た時も、手作業を交え、応じられるというのも、商売の一つの形。技術も大切だが、各自でセンスも学んでほしい」と期待を寄せる。
                                                (廣川)