25年の節目に芸展連盟大賞受賞
一貫して 「反戦・平和」 描き続け
三条市南新保 佐藤多雅子さん
 新潟県三条市南新保、佐藤多雅子さんは、昨年、絵を描き始めて25年の節目に、第31回県芸術美術展(芸展)で連盟大賞を受賞し、今後、より一層の活躍に期待が寄せられている。 
 佐藤さんに、絵を始めたきっかけや、今後の活動などについて話を聞いた。

 佐藤さんは、子どもの頃から、道路に寝そべって石などで描くほど絵が好きで、描けば上位の賞に入るほどの腕前だった。

 中学時代は、美術部に所属し、大好きな絵を描く日々を送っていたが、三条東高校時代は、美術部には所属しなかった。

 幼い頃、佐藤さんの近所に故大桃寛さんが住んでいて、日曜学校として絵を教えていた。佐藤さんも習いたかったが、金銭的なことを考えると親に言い出せず、一人で描いていた。

 高校入学後も、本当は美術部に入りたかったが、油彩を描かなければならず、そのために、親に「油彩道具を買って欲しい」と言えず、入部を諦めた。

芸展連盟大賞受賞作品「ノー・モア」 その当時、通学路にある杉山額椽店に並ぶ、3000円くらいの油彩道具を、毎日見ながら登校していた。

 自分が親の立場になり、考えてみると、「私が『欲しい』と言えば、道具を買ってもらえたと思う。子どもには、好きなことをやらせてあげたいですからね。でも、そのころは言えなかったんですよ」と、懐かしそうに思い出を語る。

 本格的に絵を描き始めたのは、結婚し、子どもが幼稚園に入った、30歳ころから。

 まず、故村井善次郎さんに油絵の手ほどきを受け、ほかの先生や若穂囲いづみさんを紹介してもらった。

 「村井さんには、絵の具の出し方から何から教えてもらった。朱陽会も紹介してもらうなど、いろいろな面で引っ張ってもらいました」と、今でも感謝の気持ちでいっぱいだ。

 そもそも、佐藤さんが本格的に絵を描いたきっかけは、「自分の気持ちを伝えたい」という思いからだった。

 昔から我流で詩を書いており、仕事関係の新聞に投稿、掲載されたこともあった。しかし、自分の気持ちを詩で伝えるには、言葉だけが先行してしまうため限界を感じ、色を塗って見てもらった方が分かるのではと考え、「絵」という手段に変えた。

 佐藤さんのテーマは、「反戦、平和」。これは、絵を習う前から、頭にあり、現在も一貫して描いているもの。

 「おどろおどろしい絵を描いて、戦争の怖さなどを説いて回る人もいるが、私はそこまで出来ない、いわゆる中途半端。おどろおどろしいもので表現するのではなく、イメージしたものから何か見る人が感じてもらえれば」と、絵に込めた思いを述べる。

 絵のタイトルに「黒い雨」など、いろいろなものを付けていた時期もあったが、15年ほど前から、タイトルを「ノー・モア」としている。

 佐藤さんの絵は、アフガニスタンの子どもの顔や、アウシュビッツ収容所の様子など、さまざまな要素を組み合わせて構成している。「以前は、必ず広島の原爆ドームを入れていました。ある時、女流会展で先生に『ドームを描かないと、あなたの言いたいことは言えない?』と言われ、はっとした。それにしがみついていないと不安な面もあり、どんなに小さくても必ず入れていた。それ以来、描かないようにし、今ではドームがなくてもやっていけるようになった」と、自信をのぞかせる。

女流画家協会展出品作 また、「絵を描きながらも、初心を思い出すようにしている。『自分の技術や思いが先走っていないか』と、ふと振り返り、『これでいいのだろうか』と常に思うようにしている」と、絵に対する姿勢を話す。

 今は家で孫の面倒を見ているので、絵を描く時間は少ない。描けない時間にイメージを膨らませる。もちろん、いざキャンバスに向かうと、考えていたことと全然違うことも。「構図を考えるのに時間がかかる。でもそれが楽しい」と言う。

 自分の創作活動以外にも、三条市一ノ門、杉山額椽店で、4歳以上の子どもたちに絵を教えており、ことし3月で7年になる。

 「子どもの絵には驚かされる。上手なのにびっくりするのではなく、例えば、『ダルメシアンを好きなように描いていいよ』と言ったとき、4歳の子どもが紫のような色で塗る色彩感覚や、その色を置く間隔など、感性にびっくりすると同時に『負けた』と思うことも」と、子どもたちの感性のすごさに驚嘆することもしばしば。

 同教室では、いくつものモチーフを並べ、その中から好きなものをストレートに表現する、描きたいものを引き出す構成力、それを一枚の画用紙の中に入れるバランス感覚、そして自分の責任で最後まで絵を完成させる力を養うようにしている。

 絵以外にも、月1回の工作の時間や、抽象的なデザインを描く月を設けて、それぞれの個性や感性を伸ばすことを心がけている。

 「工作は、材料を与えるが、『こうしなければダメ』などということは言わない。立派に出来なくても、出来上がるまでに苦しんだりする過程が大切。工作の時間は、みんなが夢中になってやっているので、教室は静か。でも、絵を描いている時は大騒ぎ」と、目を細めながら教室の様子を話す。

 その子どもたちも、昨年はMOA美術展やふるさと絵画コンクール、Tシャツデザインコンテストなどで、上位入賞を果たすなど、大活躍だ。

 佐藤さんは「これで教えている私が何も取れなかったらどうしようと思っていた。芸展は入選すればいいと思っていたが、思いがけずに連盟大賞という大きな賞をもらい、本当に驚いた」と、その時の感動を述べ、「今後は、作品をより深いものにしたい」と意欲を見せている。
                                                (廣川)