沈滞地場に風は起きたか
燕市経済再生戦略会議の2年間
新潟県燕市の燕市経済再生戦略会議(遠藤栄松議長・36委員)は、12月下旬、約2年間の協議内容をまとめ、答申書を燕市長に提出した。
燕市および周辺地域における経済の活性化に向けた提言が、今後どのように生かされていくのか、約2年間の活動を振り返る。
〜5部会の打開策 早いものは新年度から〜
そもそも燕市経済再生戦略会議(以下再生会議)は、高橋甚一燕市長の2期目の選挙公約に掲げられていたもので、市長の諮問機関。
長引く不況に加え、地場産製品と競合する商品が海外から続々となだれ込んでいることから、地場産業の再生、経済の活性策について方針を策定し、何とか打開策を講じようというもの。
議長には、(株)遠藤製作所の遠藤会長が就任。任期は2年、民間の企業人らを委員として、平成13年4月に活動をスタートさせた。
海外戦略、新分野、IT戦略、商店対策、総合調整の五つの部会を設け、各分野の再生プランを協議した。部会は月に一度、そして全体会議を月に一度開き、進行状況や方針を決めていった。
動きが早かったのは、IT戦略部会(部会長・賀井治久(株)ツバメックス社長)。ホームページ上に、燕市の技術マップとバーチャルファクトリー(仮想工場)を立ち上げ、受注の拡大につなげていくシステムを提言した。
縦のつながりが強い地場産地において、横に広がるネットワークの構築を図り、受注を呼び込むという新しい窓口として期待される。
独立運営に向けた組織づくり、それに伴う参加企業の加入、受注につながるようなシステム整備が課題。
一方、なかなか話がまとまらなかったのが、商店対策部会(部会長・本多昭司アルス美容室)。委員が任期半ばで交代するという事態に。新メンバーになってから、空き店舗対策について順調に進みかけたかのように思われたが頓挫。
前任、後任の部会長ともに、「市内商店街が一つにまとまらない」との嘆きが口をついて出た。
5部会の中でも異色だったのは、総合調整部会(部会長・岡田勝ツインバード工業(株)専務)。
市財政の厳しさに反比例するような、人件費の割合を指摘。市役所をおよそ500人の職員を抱える、燕市最大の会社ととらえ、合理的、効率的といった民間の経営感覚で協議した。
「燕市の活力は市役所から」と市民参加型行政システムの確立を要望。先進市の視察も踏まえ、市民が分かりやすい情報の提供、市民活動の支援を求めた。
〜中国視察でアクション 引き続き協議へ〜
海外戦略部会(部会長・小柳孝礼燕振興工業(株)社長)は、中国との付き合い方と燕産地の生き残りがテーマ。
1年目には、燕産地製品と競合する中国の生産都市、および企業を視察。
技術力の向上を目の当たりにして、競争よりも住み分けを認識。大量生産型の中国が苦手な、開発力、技術力、品質、付加価値に特化していく必要性を強調。
中国は買い付けるだけでなく、巨大市場でもあることから、中国商業の中心、上海を情報拠点とする、上海事務所の早期設置を強く要望した。
同部会の中国視察を契機に、ステンレス鋼材の価格差解消に向けたアクションが起こった。
新分野開拓部会(吉原祐部会長)は、1年目には、県による地場産業振興アクションプランと連携。中期的な方策として、マグネシウム合金を活用するプロジェクトを提案。2年目は短期的なものとして、ステンレスメーカー6社に働きかけ、ステンレスを使った新規参入分野の調査に取り組んだが、メーカー側の消極的な態度で結果を出すことはできなかった。
燕産地が得意とする、ステンレス加工技術を生かし、エネルギー、環境、リサイクルといった分野での組織立ち上げを提言した。
1年目には、1年の成果として中間答申を提出。最終答申は、任期を終える今年3月に提出することにしていたが、新年度から実行を望む事業もあるため、予算編成に間にあうように、12月とした。
遠藤議長はじめ、5部会の部会長が勢ぞろいし、市長に答申書を手渡した。
答申書の概要を説明し、実行を求める議長、部会長らの声に対し、市長の答えは「予算がない」「それは難しい」「検討している」など、歯切れの悪さばかりが目立った。
活動を振り返り、遠藤議長は「風通しをよくすることが、大事なポイントだった」と集約する。
提言をどう生かしていくのかは、リーダーの手腕にかかっている。
「できない、だめだと決め付けずに、ならばどうするのか。トップが先頭に立ち、研究チームなりプロジェクトなりをつくり、知恵を絞ってほしい」と、市長の姿勢に苦言を呈した。
〜生かせ民間の知恵 これからが本番〜
「経済を再生する」ための提言をまとめるという重責を担った委員にとって、2年の任期は長かった。
平成13年4月と平成14年12月、二つの時間の間には、国内外で、予想のできなかったような出来事が起き、経済、社会情勢はめまぐるしく変化した。
委員は企業経営者や民間人がほとんど。燕市や周辺地域の中、長期的な方針を考えようにも、それぞれが自らの会社で抱える問題にも対処しなくてはならなかったはずだ。
厳しい時代の2年を費やし、民間の知恵を絞った提言を無駄にしないでほしいと願う。
市長は、選挙公約を果たし再生会議を立ち上げたが、公約通りに答申書をまとめて終わったというだけでは始まらない。できることから、市民の目に見えるように形にしていくことが重要だ。
長く暗いトンネルの出口はまだまだ見えないが、再生会議の活動、そして答申書を契機に、一歩でも前に踏み出してほしい。
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再生会議の委員は次の通り。 (敬称略)
【議長】遠藤栄松
【総合調整部会】▼会長・岡田勝▼副部会長・池田弘▼委員・岡田和之▼同・樋山証一▼同・古川八栄子▼同・本間哲則▼同・山崎慶子
【海外戦略部会】▼会長・小柳孝礼▼副部会長・秋元幸平▼同・明道章一▼委員・小林貞夫▼同・田中久壹▼同・田野隆夫▼同・鳥部敏行▼同・末田正幸
【新分野開拓部会】▼会長・吉原祐▼副部会長・坂口作弥▼委員・神戸徳太▼同・塩浦時宗▼同・中野信男▼同・福田稔
【IT戦略部会】▼会長・賀井治久▼副部会長・桜井薫▼委員・加藤謙治▼同・丸山克繁▼同・原田義則▼同・宇佐美憲一
【商店対策部会】▼会長・本多昭司▼副部会長・田中耕栄▼委員・加藤豊子▼同・小林格▼同・坂田文昭▼同・高橋みどり▼同・星野晃作▼同野澤良一
(斎藤)