家庭用品、調理用品、園芸用品など金物製造販売で、大きく発展している新潟県三条市大野畑、ニラサワ製販(株)(韮沢昇社長)は、創業33年を迎えたのを機会に、このほど新会社、グリーンパル(株)(佐藤正文社長)を設立、経営を全面的に幹部社員に任せ、新たなスタートを切った。
これまで、手堅い経営によって発展してきた企業は多いが、家族、姻戚関係者以外の幹部社員に事業を継承するには後継者難で、激動の時代に、どのようにバトンタッチするか悩んでいるというのが現状。
そこで、韮沢社長に、新会社設立と幹部社員への経営の継承について、これまでの人材育成の努力も含め、熱い思いを聞いた。
〜結婚を機に木工所立ち上げ〜
ニラサワ製販の韮沢社長は、新潟県中之島町の農家の末っ子で、長男に生まれた。まさに団塊の世代で、進路を決める時期には、新潟県は「100万トン米づくり運動」が華やかで、稲刈り機が普及し始めたころだった。
しかし、韮沢社長は、米づくりだけでは、将来の農家経営は難しくなると感じ、乳牛の飼育をしようと北海道の牧場に出かけ、畜産を勉強した。広い牧場一面に牧草のレンゲの花が咲いていた。勉強すればするほど、中之島町では、不可能であることを知らされた。
22歳で結婚が決まった時に、二人で「商売をしよう」と誓い合って、中之島町の実家で、木工所を立ち上げた。最初は、小鎌や鍬、刈込鋏などの金属部分を刃物メーカーから仕入れて、木柄を入れて、三条市内の金物卸問屋に販売した。列島改造など、日本中が好況に沸き返り、商品の売れ行きは好調だった。
平成3年に、金属加工のロボット式自動機械を導入。木のハンドルと金属を組み合わせた商品の生産、販売を始めた。
また、平成8年には、金属とプラスチックを組み合わせた複合商品の開発に取り組んだ。「家庭日用品販売を手がける三条市内の大手の会社の社長さんからアドバイスを頂いた」と、その時のことを忘れない韮沢社長だ。
とかく経営者は「変化」を恐れがちだが、逆に、「変化がチャンス」と考えることが、中小企業の経営者にとっては不可欠。韮澤社長は、まさに「変化」を自社の発展のバネにし続けてきた。
〜人材育成の秘訣は「夕食」〜
韮沢社長の口癖は「企業は人なり」。経営者なら、企業経営に人材育成が欠かせないことは十分過ぎるほど承知しているが、なかなか成功しない。
人を育てる秘訣について、同社長は「特別なことではありませんが、常に、幹部社員と飲みに行くこと」と言う。また、社員の本音を聞きたいときや、社員の表情を見ていて、「悩んでいるな」と感じた時には、すぐに夕食に誘う。「普段、会社では、社員が10個話し、なかには、2、3個はいい話をしているのですが、私がなかなか耳を貸さない。少し酒が入ると、社員に気を遣わせないし、本音が出る。いいアイデアがでますよ」。会社の創意工夫の源でもあると言う。
10年ほど前から、意識的に社員と夕食を共にし始めたのだが、今では、お店の方で「社長さんは、いつも社員と来る」と評判になっている。
〜後継者 苦労共にした社員適任〜
家族や、親戚を入社させるかどうかについても、いろいろな考え方があるが、韮沢社長は「私は、常々、幹部社員に、『家内以外の身内を社員にしない。会社の業績を伸ばす過程で、仕事などで、苦労を共にしてきた経験豊かな社員のなかで、やる気があり、また適任であれば、社員が後継者になるのが一番』と、持論を言い続けてきました」

平成8年、プラスチック成形工場を建設するとき、幹部社員との話し合いで、「7年後の平成15年までに、借入金をなくし、仕入先への支払いを全てキャッシュにできるように、増収増益にする」というハードな目標を立てた。目標をクリアしたら、後は、幹部社員のなかから後継者を出すという約束をした。
韮沢社長は、そのころ、全く業種の異なる事業を手がけ、会社を立ち上げる最中だったので、なおのこと、業務の大半を、幹部社員に一任し、頼りにしてきた。それからというものは、幹部社員はもとより、全社員が、「目標を必ず達成する」という信念を強くして、業務に励んだ。「その姿に、頭の下がる思いでした」と、高い目標を掲げ、幹部社員と後継者について約束してよかったと実感している。
業務も順調に推移し、目標もクリア、今後も社員の意欲を高め、会社の発展につながると、約束の実行に移った。
〜プレッシャーとやり甲斐 幹部社員も出資し新会社〜
幹部社員と具体的に事業継承の話し合いに入り、ニラサワ製販のように、出来上がっている会社を引き継ぐのでなく、ニラサワ製販と、複数の幹部社員が、それぞれ出資し、新会社を設立して取り組むことになった。
「新会社にした方が、幹部社員も、新たな気持ちで、プレッシャー(責任)を感じながら、仕事に取り組む。その方が、気力も湧くし、やり甲斐がある」というのが、幹部社員の気持ちだった。
新会社、グリーンパルは、資本金5000万円。基本的には、ニラサワ製販のグループ企業のひとつで、従来の建物及び機械などを、引き続き使用し、資金面でも、ニラサワ製販が100パーセント責任を持つ。もちろん、支払いは100パーセント現金払いにしたのだから、取引先にも、心配はかけない。
社員も、従来通り、引き続き業務を行い、今後は、名実ともに、佐藤社長のもとで、人事を含めて、新しい会社の経営に取り組んでいく。
最近、県央地域でも、韮沢社長に限らず、新会社を設立することで、経営と資本を分離し、親族でない幹部社員を新社長に登用、経営を完全に任せ、自身は、さらにニュービジネスに挑戦し、新しい会社を興す経営者が生まれてきている。
経済環境の変化、ライフスタイルの変化が激しく、幹部社員が、直接、経営責任を持って、それぞれ任された会社の経営に全力で当たる必要がある。
変化の時には、ビジネスチャンスも多い。株式上場とまではいかなくとも、中小企業のままで、複数の会社を興し、オーナーになる経営者は増えるだろう。
