新潟県燕市議会は、11月5日午後1時から平成15年度第4回臨時会を開き、7日付けでの退職を求める高橋甚一市長の退職申出書について審議し、記名投票の結果9対9の同数となり、赤塚功議長の採決によって、申出通り可決した。これによって高橋市長は、7日で市長職を退いた。
高橋市長は、政治生命をかけるとしてきた10月26日の住民投票が、合併反対多数に終わったことを受け、29日に、11月7日付けでの退職を求める退職申出書を提出していた。
この日は、午前9時から議会運営委員会を開き、9時30分には議員協議会、10時30分には本会議を開く予定だったが、住民投票で賛成派に回っていた議員が退任の撤回を望むなど、議員間の協議が難航、議会運営委員会閉会後に、各派代表者会議を開くなど、当初の予定を大幅に変更した。
10時40分からの議員協議会では、当初、冒頭の挨拶で退席する予定だった高橋市長に、市議から質問したいとの申し出があり、星野義則、本多了一、田辺博、斎藤紀美江の4市議が質問に立った。
星野市議は「高橋市長は、住民投票前の集会などで、賛成が1票でも下回れば辞職すると言いつづけてきた。(住民投票)条例の第3条では、投票結果の尊重がうたわれており、市民の意向を尊重しがんばってほしいという気持ちもあるが、市長の今の気持ちを聞きたい」と質問した。高橋市長は「気持ちとしてすっきりしており、投票については、第3条の尊重は当然と考えながら、26日までやって来た。この気持ちは今も変わらない」と答えた。
田辺市議は「市民の審判が下った中でも市民から留任を望む声が強い。7年の実績を市民は評価している。第3条の尊重、市民の幸せを考えたら、ここで辞めるのはおかしい」、斎藤市議は「反対に投票した市民からも、市長の留任を望む声が出ている。燕市は、今大変な状況で、年末も控えている。撤回には勇気がいるが勇気を持ち、市長の果たす役割に心意気を持って取り組んでほしい」と、7日付けの退職が否決された場合の留任を望んだ。
本多市議は、住民投票条例第3条の尊重などについて、高橋市長、住民投票条例発議者の田野隆夫市議、酒井基市議に質問した後、「市長は退職申出が、仮に否決された場合、撤回するのか」と迫ると、高橋市長は「結論めいた話については考えていないし、仮定の話には答えられない。否決の趣旨や中身が分かった時点で、判断材料にはしたいが、気持ちは変わっていない」と答えた。
議員協議会は、11時20分ごろ閉会し、11時30分ごろには、再び各派代表者会議が開かれ、午後1時から本会議となった。
本会議の冒頭、高橋市長は、「本日は特にお許しをいただき、7年間にわたり燕市長という名誉ある職務を、誇りを持って務めさせていただいたことに対し、燕市議会議員の皆様と燕市民の皆様に心から感謝の思いを持ってご挨拶とさせていただきます」と、退任の挨拶に立った。

「平成8年9月、全く経験の無い未知の世界に足を踏み入れました。一日一日、時の経過とともに市長という職責の重さ、厳しさを感じ、その中で、常に市民の幸せを基本理念において、議会の皆様方のご指導と、中野助役をはじめ歴代4役、そして職員に至るまで多くの皆様のご協力により、何とか今日まで務めさせていただきました。地方分権の進展にともない、地方の時代ともいわれていますが、地方自治体にとって財政的には極めて厳しい時代を迎えています。少子高齢化が一層進むなか、まちづくりに向けて大変な困難が待ち受けています。この時こそ、一丸となり乗り越えていただきたい。わが国、憲政の父、尾崎咢堂先生の『人生の本舞台は、常に将来にあり』。この言葉を常に引用してまいりましたが、今また改めて噛み締めますと、この精神が大変に重要だと思いを新たにします。このようなかたちで職を辞さざるをえないことは、不本意ではありますが、私の意図するところを汲み取っていただき、ご承認賜りますようお願いします」
高橋市長が退席した後の審議では、市議から「異議あり」の声が出、投票での採決を行った。投票では、反対9、賛成9と拮抗し、赤塚議長の採択によって、申出を承認。1時30分ごろ閉会した。
議会閉会後、高橋市長は記者会見を行った。
今の気持ちについて尋ねられると、「すっきりした。よかった」とし、今後の燕市について「財政が厳しい。このままのかたちではやっていけないだろう。そのために合併を訴えてきた。(まず西蒲原郡で合併し、その後、三条市などと合併する)2段階合併はありえない」と答えた。
高橋市長は、7年間の施策などについて説明、否決された場合についても「考え直すつもりはなかった」と答え、「今こっちが負けたとは考えていない。近い将来、歴史が証明するだろう」と話していた。今後は、「今の段階で政治に、役職など表面に出るつもりはなく、口を出すつもりはない」という。
(外山)
