国際ビジネスの危機管理考えるきっかけに
SARS 県央経済に及ぼす影響(1) 
加茂市・日中ビジネス研究所
 今年2月中旬、中国政府が、「広東省において5名の死亡例を含む、305名の原因不明の肺炎、発生」とWHO(世界保健機関)に報告、その後、世界各地で発生、死亡率が高く、世界中を震撼させた新型肺炎SARS問題。

今後はさらに知的分業を 病原体も、ハクビシンなど食用にされる野生の動物などから感染が始まったと推定される新種のコロナウイルスと判明するなど、世界の医学関係機関の必死な調査、予防対策で、ようやく、沈静化の方向にある。

 しかし、中国本土では、感染拡大を抑えるため、1人でも感染者が発生すると工場閉鎖されるなど、生産システムの大幅な乱れなどを伴いながらも、感染させないために、従業員を工場内から出さない、外部から資材、半製品などを運んできたトラックを工場に入れず、門で止め、製品のみを運び込むなど、さまざまな対応策が取られている。

 商社なども、従来から流れている商品はともかく、新たな商品を発注するにも、SARS発症地域に社員を派遣できないので発注を控え、中国に出張に行くと、逆に潜伏期間の10日間、ホテルで缶詰状態にされるなどで、思うように活動できないと嘆く経営者も。

 もちろん、県央地域の企業も、さまざまな対策を取っている。経済的な影響はこれからで、SARSの中国経済への打撃が、やがて日本からの輸入にブレーキをかけることにもなりかねない。

 感染拡大が下火になったとはいえ、経済的な影響はこれから表面化するかもしれない。

 こうした、現場の状況と対策について、県央地域の企業にインタビューし、今号より随時、連載していく。

 重症急性呼吸器症候群(SARS)の最初の患者が出たのは、昨年11月ころ、広東省でのこと。その際は、まだ現在ほど猛威を振るうとは考えられておらず、中国の衛生部もさほど注目していなかった。現に中国のメディアは、ことし2月25日、「広州の大学はSARSの影響を受けずに授業が始まった」と報じ、3月18日には、「世界保健機関(WHO)は、SARSに対する中国の対応を褒めた」としている。

 しかし、その後、北京市で感染が拡大、国内最大の被害となったことから、対応の遅れや責任を問われ、衛生部長の更迭、北京市長の免職などの事態を招いた。

 地域密着で、対中国ビジネスを支援している、新潟県加茂市五番町、(有)日中ビジネス研究所の王裕晋所長は、当初発表されたSARS患者数が、後に大幅に変更された経緯について、「病院は縦割り行政。特に軍隊の病院は、レベルが高く、サービスもいいので、利用する市民も多い。しかし、軍の管轄となるため、そこでおかしな患者が出ても、すぐには情報として発表しない。それが、すぐに統計がまとめられなかった要因だ」と話す。

 その一方で、SARS問題により、世界が中国に関心を持ち、中国が世界に影響を与える国であり、国際社会の一員であることが証明され、中国政府も、今まで軍の情報は統計などに加えなかったが、今回のように加えるなど、考え方を改めるきっかけとなったことについて評価している。

 現在、新たな感染者は出ておらず、事態は沈静化に向かっており、6月1日以降は、移動制限から通常に戻す方向にシフトしている。

 「世界の工場」と言われる中国だが、「製造現場は今のところ、さほど影響を受けていないが、流通では結構影響が出ている。これが最終的には製造に影響すするのでは」と王さん。

 新感染者が出ていないとはいえ、依然として厳戒態勢であることには変わりない。各自治体は、自衛手段として、消毒に力を入れている。車1台ごとに消毒するために渋滞となり、国際速達便のEMS、DHLなども遅れが出ており、例えば通常なら4日ほどで届くものも、1週間ほどかかり、昔の航空便と変わらないことも。

 「今は現地に行けないので、サンプルで確認する。EMSやDHLは、インターネットで商品が今どこにあるのか確認することができるが、中国で消毒した後、日本でも検査、消毒し、そこで異常がないものだけが運ばれることから、確認できた時点でのデータ掲載となるため、非常に不透明になっている」

 また、現地では、空港や港がある省や市で生産したものを運ぶのはいいが、省や市をいくつもまたいでの運搬は、その都度、消毒の手間もかかることから、対応しない業者も出ているとのこと。王さんは「今、我慢している状態なので、これが長く続くと大きな打撃となる。また、外食産業や観光、交通などの国内消費も落ち込んでいる」と現状を危惧する。

 現地との行き来による商談などの影響について、「今、青島では、政府が補助し、各企業に自社の商品や会社情報などを公開するようにさせており、行き来できない分、情報強化でカバーしようという動きがある」とした一方、「今まで、安易に行き来しすぎていた感もある。日本でも確認できたことも、わざわざ行っていた部分もある。確かに、次のステップに関係する新規事業なら行くことも意味があるかもしれないが、本当に行く必要がある問題なのかどうか、考え直す必要があるのでは」と検討を促す。

 王さんの出身地、山東省での感染者は1人。「親戚や知人に聞いたところ、普段、マスクなどはつけていないそうです。列車や飛行機などに乗る時はつける人もいるが、全員ではない。日本は過敏に反応し過ぎている。しかし、過敏反応だからと言って、きちんと対応を取っているわけではない。もう少し危機管理意識を持つべきだ」とし、「国際ビジネスは、ますます難しくなり、知的分業が進む。物的にはある程度進んでいるが、今後はさらに頭脳、デザイン、技術、販売の各能力の分業を進める必要があるだろう。そして、今後、同様の事態が起こった場合、どういう態勢をとるのか危機管理についても考えなければならない」としている。   
                                                (廣川)