伝統技術の継承を
全国建具展示会総理大臣賞受賞 
加茂・渡辺建具店 渡辺文彦さん
 新潟県加茂市下条、伝統と創造の渡辺建具店の渡辺文彦さんは、このほど滋賀県で開かれた、第37回全国建具展示会に組子屏風を出品し、見事、最優秀賞にあたる内閣総理大臣賞を受賞した。一昨年、新潟県で開かれた同展示会での中央職業能力開発協会会長賞受賞に続いての快挙を達成した。
賞状を手に渡辺さん
 同展示会は、全国約6000業者で構成する全国建具組合連合会が、多様化する住宅需要に対応するため、技術交流と伝統技術保存を目的に、毎年、各県が持ち回りで開いているもの。今回は、障子や衝立、ドアなど137点が出品された。

 渡辺さんは、「流れ」をテーマに、幾何学模様を変化させた組子で曲線を表現。全体的な曲線を出すため、屏風を折りたたまず、真ん中で少し湾曲させるだけにとどめて展示し、「雲とかすみ」の雰囲気を生かした。下の部分には、「逆卍」の技法を使った。「卍は浄土を意味するが、逆に組むことで浄土へ到るための修行を意味するので使った」と渡辺さん。

 渡辺さんは、現在28歳。県立加茂高校を卒業後、家業の同店に入り、父の文夫さんのもと、2代目として修行の毎日だ。渡辺さんは「家業を継ぐ気はなかった。でも、小さい頃から作業場などで遊んでいたし、いろいろな展示会にも連れて行ってもらったので、なじみはあったのかもしれない」と話す。

 展示会などに出品するようになったのは、5年ほど前から。展示会に行っても、出品作に「新潟県」のものが少なかったことから、「新潟だって作れる人がいるんだ」との思いを込めて出すようになったのが、きっかけ。

 初めての出品は、20歳の時の加茂市展。工芸部門で奨励賞を受賞した。「祖母に自分の作ったものを見てもらいたくて作った。その時のもてる技術をすべて出したが、今見ると、粗(あら)にばかり目がいくので見たくない」と苦笑い。

 同展示会には、1998年から出品。初出品で、全国建具組合連合会長賞を受賞したほか、翌年の石川大会では石川県知事賞、2001年の新潟大会で、中央能力開発協会会長賞を受賞し、今回の受賞に至る。新潟大会での受賞を受け、加茂市市民福祉交流センター「加茂美人の湯」に、作品を常設展示しているほど。

 渡辺さんは、「誰が、どこで見ているか分からない」とし、誰がどんなに近くで見てもいいようなものづくりを心がけている。隙間など、少しでも気に入らなければすぐに直すなど、妥協しない姿勢は、まさに職人。そのため、作品を完成させた時の達成感はひとしおだ。

 また、「少しでも加茂市のPRになれば」と、展示会に出品する際は、「新潟県加茂市下条」と書かれた看板を付けている。

 渡辺さんは、「その時、その時に自分のできるものを作って出している。組子は、組み合わせによって、いろいろな表情が出る」と組子の魅力を語り、「多少は現代的なものを入れるようにはしているが、基本は伝統的な和風のもの。奇抜なものはその場だけで、すぐに飽きてしまう」とこだわりも。これは、「組子は芸術ではなく、あくまで伝統技術」との渡辺さんの考えから。

 「今後も、年1回の大会には出品していきたい」と意欲的だ。

 なお、同店には、今までの渡辺さんの作品も置いてある。見たい人は、事前に同店(TEL0256・52・9164)へ連絡する。    
                                                (廣川)