マグネシウム軽量ペンチ新開発
涌井製作所
 作業工具メーカーの新潟県三条市塚野目、(株)涌井製作所(涌井伸市社長)は、平成14年度県央アクションプラン推進事業の一つ、「マグネシウム合金を使った商品や部品の研究開発」に取組み、マグネシウム軽量ペンチを開発、このほど量産試作を終らせた。新商品の発売は9月を予定している。

 涌井清次専務は、「作業工具業界は現在、プロ向け市場が冷え込むなど厳しい状況にあるが、マグネシウムの特質を生かした新商品開発を進め、市場に攻め込むけん引役にしたい」と意欲を示している。

〜加工の問題〜

新開発 マグネシウム軽量ペンチ 県央アクションプランは県の補助事業で、地域産業の活性化を促進するための支援事業。

 同社が、県から、マグネシウム合金による商品開発を持ち掛けられたのは昨年の7月だった。その後、同社の協力工場9社とグループを組み、マグネシウム合金を使ったペンチ作りに取り組んだ。開発補助金は540万円だった。

 昔から、鋳造品などでマグネシウム製の部品はあったが、鍛造成形による工具作りは今回が初めての試みだった。

 涌井専務は、「まず、マグネシウムが、あまり流通していない関係で、素材自体の価格が高いことが問題になる。さらに、板状のものは危険ではないが、加工の段階で切粉が出た場合、その切粉が勢いよく燃える可能性があり、危険を伴う」と、マグネシウム合金による商品開発の難しさを指摘する。

 さらに、問題点として挙げられるのは、プレス加工も、鉄などのように常温では出来ず、温間プレスを用いなければならないこと。

 また、マグネシウムは、鉄などより、重量が非常に軽いという利点があるが、軟らかく、切断や激しい作業には向かない。

 「以前、新潟県作業工具協同組合の旗振りで、アルミ製ペンチの開発に取り組んだが、アルミニウムも、マグネシウムと同じように、軽いが軟らかいという性質を持つ。アルミ製ペンチの場合、本体はアルミにしたが、刃の部分や対象物をくわえる部分を鋼にし、それを接合して対処した。しかし、接合する加工賃が嵩み、結果的に、高価な商品になってしまった」と振り返る。

 今回の商品開発には、アルミ製ペンチの生産で起こった問題点も踏まえた。

〜44%の軽量化〜

 今回の商品開発には、アルミ製ペンチの開発経験に加え、同社がホームセンター向けに開発した記念碑的な商品である「センターカッティング」シリーズ、2年前に開発した「パワーライト」シリーズのノウハウを結集した。

 「センターカッティング」シリーズは、98年のDIYショウで、新商品ヒット商品コンクール通産大臣賞を受賞した。不必要な研磨加工を極力避けるなどコスト面を配慮したほか、刃部を、従来の、両刃を押して切るサイドカッティング方式から、ギロチンのように切るセンターカッティング方式にした。そのため、価格を抑えた上に、切れ味を向上させるなど、機能をアップさせた。

 「パワーライト」シリーズは、センターカッティングシリーズを、さらに機能向上させたもの。JIS規格にこだわらず、従来品よりも20%軽く、30%パワーアップ、さらに30%価格ダウンを実現した。

 今回のマグネシウム製ペンチには、パワーライトペンチのヘッドをそのまま活用した。

 涌井専務は、「アルミ製ペンチとは逆の発想だ。アルミ製ペンチの場合、ペンチの一番大切な、刃や、くわえ部だけを特殊鋼にしたが、今回は、ヘッド全てを特殊鋼にした。ハンドルをマグネ製にし、ヘッドとハンドルを結合した。その分、バランスの取り方には苦心した」

 ヘッドを一体型の特殊鋼製にしたことで、アルミ製ペンチよりも丈夫になった上、コストも削減できた。

涌井製作所のラインナップ 今回のマグネシウム製ペンチは、200ミリサイズで、JIS規格品が392グラムなのに比べ、同サイズで220グラムと、44%もの軽量化に成功した。アルミ製ペンチが33%の軽量化だったのと比べても、従来品より格段に軽いペンチになったことがわかる。

 さらに、ヘッドすべてが特殊鋼なので、激しい使用にも十分耐えられる。

 切断能力も、センターカッティング方式が取り入れられ、直径2ミリの銅線の芯が3本入ったFケーブルが切れる。

 価格は、200ミリサイズで5980円を予定している。同サイズでアルミ製ペンチが8650円だったのと比べ、3割安く設定した。

 「半分ほど軽く、機能も従来品と比べ、格段にアップした。プロの人たちの疲れを軽減し、作業効率をアップさせるのは言うまでもなく、女性や年配の人にもアピールできる商品だ」と自信を見せている。

〜本物は残る〜

 同社は、「確かなものは長く愛される」というコンセプトで、価値ある新商品を開発し、厳しい現状にある作業工具業界に生き残りをかけている。

 涌井専務は、「中国メーカーの追い上げで、作業工具の価格破壊が叫ばれ、地域のメーカーは厳しい競争を強いられている。しかし、例えば、中国の工場で使うのが、私どもメイド・イン・ジャパンのものだったりする。切れないニッパー、思うようにくわえ込まないペンチなどでは効率が悪いからだ。よいものは確実に需要がある」としている。

 センターカッティングシリーズ、パワーライトシリーズ、そして今回のマグネシウム製軽量ペンチと、厳しい市場の中で着実に信頼を得られるような商品の開発に注力していく。