カナダ販売経験生かし 
TPOに合った日本酒 提案も
加茂・(株)マスカガミ
輸出用の「萬寿鏡」 (左)と国内用 多民族が暮らすカナダでは、1990年代に日本ブームが起こり、今も安定した人気を誇っている。

 清酒「萬寿鏡」製造元の、新潟県加茂市若宮町1、(株)マスカガミ(中野惣太郎社長)は、1998年頃からカナダに日本酒を輸出している。出荷数は年々増加しており、現在では同国B・C(ブリティッシュコロンビア)州に輸出される日本酒シェアナンバー2の地位を確立している。

 今年3月にカナダで開かれた「バンクーバー・インターナショナル・ワインフェスティバル」では、同フェス開催以来、初めて日本酒部門が設けられ、招待された。

 同社では「今後も順調に出荷数を伸ばしたい」としながら、「日本でも、ワイン同様、TPOに合った飲み方を提案したい」と意欲的だ。


 輸出しているのは、特別純米酒「萬寿鏡」300ミリリットル。日本国内でも販売しているが瓶の色を変えた。ラベルのデザインも異なり、「萬寿鏡」の漢字は残して、表記はカナダの公用語であるフランス語と英語で書かれている。

 カナダでは、酒類の輸入や販売に関して、州ごとに規約が違う。同社の主な輸出先のバンクーバーのある、B・C州は、州政府が酒の販売を取り仕切っているので、リカーストア(酒販店)は州営店のみ。

B・C州のリカーストア。日本酒も多い 販売される酒は登録されたものだけで、いきなり店頭に並ぶことはない。例えば、現地の日本食レストランからスペシャルオーダーを受けるなど、実績を重ねなければ認められないなど、かなり厳しい。

 同社では、近年、国内での日本酒売上げが低迷していることから、海外を視野に入れ、販路を模索してきた。そこに、現地バンクーバーに移住した日本人から、同社の商品を販売したいとの申し入れがあり、委託。現在、順調に出荷数を伸ばし、日本からの輸出日本酒販売シェアは、長岡市の吉乃川(株)に続き、ナンバー2につけている。

 B・C州は、カナダ最西部に位置し、カナダで3番目に大きな州。州都はバンクーバー島のヴィクトリアにあるが、経済は、州人口の約6割が住むバンクーバーが中心。林業、観光、鉱業、漁業が主要産業で、特に観光は、豊富な自然環境に恵まれ、映画のロケ地としての活用も多く、州経済の重要な財源となっている。日本との交流も深く、日本と姉妹都市提携を結ぶ都市も多い。

 飲酒に関しては、日本と同様、19歳以下の飲酒は認められておらず、州営酒店は日曜、祭日は休みとなっている。

 同社商品は、輸出コストや酒税の関係上、同リカーストアに並ぶと、日本国内での販売価格(税込494円)の約3倍強の1400円から1500円ほどになる。なかなか一般消費者が手を出しにくい価格になっている。しかも、それをレストランで出すと3000円ほどと、かなりの高級品になってしまう。

 そのため同社商品は、高級日本食レストランで出されるのが、ほとんど。

ワインフェスティバルに参加した中野社長(左)ら 特に、日本人料理人の東條さんが経営する「TOJO'S RESTAURANT」は、映画監督のスピルバーグ氏が同店の料理を食べるためだけに、自家用ジェット機で駆けつけるほどの店。その店の看板酒が萬寿鏡。しかも東條さんは、同社商品を取り扱って数年経つことから、「いい酒をありがとう」との感謝を込め、萬寿鏡に合った料理でもてなすパーティー「マスカガミナイト」を開くほど、同社商品を高く評価している。

 これらの功績が認められ、同社は、今年3月18日から20日まで開かれた「バンクーバー・インターナショナル・ワインフェスティバル」に招待された。

 同フェスは、世界15カ国から166のワイナリー、約1000種類のワインが出品され、約3万人が来場する大規模なイベントだ。そこに今年初めて、日本酒部門が登場した。ブドウ以外で作られた酒が出品されるのも、今回が初めて。

 イベントに招待された日本からカナダB・C州に輸出している地酒メーカーは、同社と吉乃川、岡山県の酒造メーカーの3社のみだった。

 同フェスに出席した、輸出担当の中野善夫さんは「向こうの人は、お酒に関して大変興味があり、食材との関係にこだわっている。ワイン感覚が強く、『おいしいのは分かったから、何の食材や料理に合うのか』と尋ねる人が多かった。それに日本では、すっきりした辛口で、食材の邪魔にならないものが好まれる傾向があるが、向こうでは、クセがあってもいいので、何に合うかを重視する」と、日本との飲み方の違いを語る。

 中野壽夫専務も「日本でも、例えば、晩酌はずっとビールではなく、TPOに合わせた酒を楽しんでほしい。日本食に合うのはやはり日本酒だと思う。ブームやラベルで飲むのではなく、その食材や料理に合った酒を飲んでもらいたい。もっと日本酒のよさを見直してほしい」と話す。

 同社では、現在、300ミリリットルのほか、1升瓶の輸出も始めた。出荷数は、昨年が年間約7500本で、一昨年と比べると50%増の伸びだ。

 2010年には、バンクーバーで冬季オリンピック開催が決まっていることから、同社では輸出先をさらに広げ、需要拡大に期待を寄せる一方、国内でも飲み方の提案など、もっと幅広くPRしたいと、意欲を燃やしている。

 問い合わせは、同社(TEL0256・52・0041)へ。

 なおURLは、http://www.masukagami.co.jp/         
                                                (廣川)