虐待を疑ったら… 一人では対応しないこと
子どもの虐待防止センター専任相談員 龍野陽子さん講演
新潟県の三条市子どもの虐待防止ネットワーク連絡会(会長・高橋一夫三条市長)は、7月8日午後2時から、三条市総合福祉センター多目的ホールで、子どもの虐待防止専門研修会を開き、社会福祉法人子どもの虐待防止センター専任相談員の龍野陽子さんを講師に迎え、「児童虐待、実際的な判断・動き方について〜気付いた後の対応について」のテーマで話を聞いた。
龍野さんは兵庫県出身で、神戸大学文学部国文学科卒。夫の転勤に伴いアメリカ・バージニア州に居住した際、バージニア州立ジョージメイソン大学で心理学を修めた。1991年、主に家庭内で起こる子どもの虐待を早期に発見し、虐待防止を援助するために設立された民間組織、東京都・子どもの虐待防止センター開設とともに、専任相談員として勤務、現在に至っている。専任相談員として勤務する傍ら、児童相談所職員、福祉関係機関職員、学校関係者、一般住民向けにも多数講演を行っている。
講演の前に、小林東一三条市民生部長が、平成15年度に三条市社会福祉課に寄せられた相談件数などを説明。平成15年度に同課が受け付けた相談は33件、33人。内容は半分以上がネグレクト(養育放棄)で、虐待を受けた子どもは、3歳から就学前の子どもが最多で、次いで小学生となっている。虐待するのは70%以上が実母とのこと。小林民生部長は「見えないところで起きているので、地域で目を配ってほしい」と呼びかけた。
龍野さんは、事例を交えて話を進めた。
最初に、今年4月成立、10月から施行予定の改正虐待防止法について、改正点を説明。親が同居人などによる子どもへの虐待を見て見ぬふりをすることもネグレクトに含まれ、子どもが配偶者などによるDV(家庭内暴力)を目撃することも心理的虐待としている。
また国と自治体の責務の中に、自立支援だけでなく、保護者への指導支援も加わったほか、早期発見に向け、例えば保育士だけでなく、保育園などの団体にも発見義務を拡大、「虐待を受けた児童」から「虐待を受けたと思われる児童」と通告対象を広げている。
対応については、「重症度、緊急度に応じた対応が必要。子どもの傷なども大事だが、その背景にある家族関係などの把握が大切。対応方法は一つではない」とし、親と子ども、各対応の一例を紹介した。
龍野さんは「児童虐待は家族の病。子どもがおかしい、お母さんがおかしいのではなく、家族全体が歪んでいるから起きる」とし、親への対応として、重症度や緊急度などを図る基準点を挙げた。
判断基準として、最も緊急度を用し、病院での本格的治療や一時保護などの必要がある「虐待群」をはじめ、「虐待予備軍」「育児不安群」「要観察群」を挙げ、それぞれの特徴、対処方法などを述べた。
龍野さんは、虐待群、虐待予備軍、育児不安群について「指導、アドバイスは余計に追い詰めることとなる。母親が子どもをかわいいと思うのが当たり前、子育ては母親一人でできるもの、育てられないなら産まなければいい、子育てがツライというのは甘えなどという『母性神話』を持って虐待する母親に接すると、逆に(虐待を)促進させることとなる」と、接し方への注意を呼びかけた。
虐待を受けている子どもに対しては、「子どもの話を信じること、どんな親でも悪口を言わないこと、そして、子どもが相談してきて『誰にも言わないで』と言っても、実際にはできないこと。できない約束はしないこと。『あなたを助けてあげたいけど、一人では助けられないので、他の人に相談しなければならない。その人に相談する時は、あなたに断ってからするね』などと言った方がいい」とアドバイス。
虐待を疑った場合については、「一人では対応しないこと。一人で対応すると巻き込まれる危険がある。『この子は私じゃなきゃ助けられない』『このお母さんは私にだけ本当のことを言う』などと思った時点で、すでに巻き込まれている」とし、対応方法は機関や組織、役割分担などを勧めた。
龍野さんは、ネットワーク会議の説明や、事前に出席者から出された質問に答え、2時間の講演を締めくくった。
150人ほどの参加者は、龍野さんの話を真剣な表情で聞き、熱心にメモをとっていた。
(廣川)
