学校を 「スキル」 伸ばす場に
三条市 『心の教育』 緊急集会
新潟県三条市教育委員会と三条市小中学校長会は、8月26日午後零時45分から、三条市立第三中学校で、「『心の教育』緊急集会〜三条市の教育の見直しのために」を開催。市内小中学校の教諭430人ほどが出席し、心の教育について講演を聞いたり、意見を交換した。
緊急集会は、7月6日に起きた、井栗小学校での小6児童による同級生傷害事件を受け、翌7日の臨時の市内全小中学校長会議で、命の大切さに関する教育などの取り組みについて、7月30日までに、各校でまとめたアンケートの提出を受けて開かれた。
新潟大学教育人間科学部助教授の神村栄一さんを講師に招き、「発達を考えた子どもの理解と対応」のテーマで話を聞き、「いじめ防止学習プログラム」の自校プランに基づく着実な実践など、6つの分科会に分かれ、各校の取り組みを聞き、意見を交わした。
講演に先駆け、松永悦男教育長は、井栗小の傷害事件だけでなく、7・13水害にも触れ、「小学校の事件も水害も、2度とあってはならないこと。これらの教訓を生かさなければならない。もうすぐ2学期が始まるが、今日の集会を、三条の再出発点としてほしい」と期待を寄せ、「これからは集会も1回だけでなく継続し、教育シンポジウムなども視野に入れて進めたい」と挨拶した。
講師の神村さんは、筑波大学第2学群人間学類卒業、筑波大学大学院心理学研究科博士課程単位取得満期退学。専門分野は臨床倫理学、教育心理学で、スクールカウンセラーや生徒指導などで、県内各校を回っており、事件後、井栗小でもソーシャルスキルトレーニングを指導した。
神村さんは「子どものすべてを学校教育が引き受けるのは無理だが、大体はそのようになっている。ではどのように生活指導、生徒指導するのか、問題に対応するのか。『心の深いところからかかわって…』などと言うと響きはいいが、実際は難しい」と現状を話しながらも、学校を広い意味での勉強の場として、子どもが生活や人付き合い、ストレスから自己管理するなどの「スキル」を身に付け、伸ばす指導をする役割を上げた。
現在の子どもについては、「昔は、子どもはまっさらな状態で生まれてくると言われていたが、心理学の基礎的研究によると、生まれた時点で個性にかなりの開きがあることが分かった。そこに各自の育った環境が加わり、それぞれオリジナル部分が強調された状態で入学してくる。個性はさまざまなので、一斉に勉強することが成立しにくくなる。この状況でどのようなサービスが比較的機能しやすいのか。今までのいろいろな取り組みが十分に成果を上げているのか、反省点はどこかを十分考える必要がある」と、今までの取り組みの再考を促した。
心についても、「大枠で抽象的にとらえても分からない。それで終わる。例えば子育てに関して愛情不足だから、その子がなかなかいい方向にいかないなど、納得しやすい状況でごまかし、言い訳だけうまくなってはダメ」と、具体性の大切さを述べ、このような状況なら相手はどのような気持ちかを周りから読み取る「場を読むスキル」、さらにそれを感じてどう対応するかも大切とした。
今、問題になっている「すぐキレる子」への対応として、「体の変化は心の変化」とし、キレやすい子に、キレる時の変化を自分なりの言葉で表現してもらい、大人がその言葉を借りて表現することで、その感覚を確認させるのが有効とした。キレそうだったけど、キレなかったという「例外探し」をし、後でタイミングを見て、何でキレなかったか理由を聞き、その子からどんな言葉が出てもいいので、再度、子どもの表現を借りて言葉にして繰り返すことで、キレて乱暴するのではなく、気持ちを落ち着かせる術が分かるようになると説いた。
神村さんは「例えば、サッカーでボールをうまく蹴ることを教える場合、どうやったら相手の真正面に行くようになるか、フォームや動きなどを、言葉ではなく感覚で覚える。その感覚を残していくことが重要。相手にきちんと蹴れるようになればサッカーを好きになり、エネルギーの発散にもつながる。だからと言って、スポーツを好きになる環境を整えるのではなく、ボールをうまく蹴るようにすることが、私たちの日々の指導。嫌なことがあった時、どういうふうな考えを張り巡らせ、悪いことになりそうな方を治めるか」と、セルフコントロールや、危険な行動を回避する神経回路をつくることの必要性を述べた。
かかわりが難しいとされる、小学校高学年と中学生について、語る能力が下がってきているので、ラジオのチューニングのように、相手の周波数に合わせるようアドバイス。「黙っていても、そこに座っていてくれるということは、何となく居心地が悪くないと思っているから。一言、二言話して、また黙るの繰り返しでも、それに合わせて対応することが大切」とした。
最後に神村さんは「せっかく集まったノウハウなどを引き継ぐことが重要だが、小学校から中学校へと実際にはなかなか伝わらない。本当なら中学の先生が、学区の小学6年生を巡回するなど、かかわっていくことで、小学校から中学校へと環境が変わっても、知っている先生が1人でもいれば、その子のサインを見つけ、受け止めることがスムーズにいくのではないか」と持論を述べ、効率的な工夫を呼びかけた。
その後、各分科会に分かれ、各校の取り組みについて意見を交わした。
事件があった井栗小は、「命の大切さ」や「暴力の根絶」などについての指導に関する部会で、事件後、全校集会で、校長が講話を行い、命の大切さを訴え、児童のトラブルがあった時は、暴力が問題の解決にならないことを繰り返し指導している。今後は、生命尊重に関する道徳や学級活動を学習参観日に実施し、保護者に公開することなどを上げた。
(廣川)
