2007年、30年ぶり転換
食、ネット、中国がビッグトレンドに
日経MJ金子編集長が燕商議所で講演
新潟県の燕商工会議所と燕中小企業相談所、燕経営研究会は、2月4日午後1時30分から、燕商工会議所で、金子隆夫日経MJ(流通新聞)編集長を講師に「2004ヒット商品番付にみる消費者の姿」のテーマで講演会を開いた。
冒頭、中野信夫燕経営研究会会長は「燕の代表的製品もヒット商品と無縁ではない。経営陣の方々は直接ヒット商品に関係ないかも知れないが、そういったセンスが大切。今の流れを無視して経営は成り立たたず、最近の経済のトレンド、過去の変動を理解しなくては厳しい時代を生き抜けない。ぜひ、商売に生かしてほしい」と、話した。
金子編集長は、日本経済新聞社編集局次長兼日経MJ編集長。早稲田大学を卒業後同社に入社し、大阪流通経済部、東京産業部、東京流通経済部、静岡支局、日経トレンディ編集長、大阪経済U部部長、日経ホーム出版社取締役編集本部長などを経て現職に就いている。
2004ヒット商品の傾向
金子編集長は「コツコツといいものを作っている人たちには、『これが、売れないはずがない』という奢った気持ちがある。この理屈はものが少ない時代には成り立っていたが、ものの飽和、情報化社会の発達によって通用しなくなった。いいものを作るのは大前提であり、それを消費者にいかに分かってもらうか、メッセージとして伝えるかといったマーケティング活動が必要。あらゆるかたちで小売市場に携る人たちが、知恵を絞ってマーケットに問うている。多くは受け入れられず、何度となく失敗して、やっと当たる。これは消費者の行動パターン、センスなどあらゆる要素が合致しないとヒットせず、まさにヒット商品は時代の鏡」として、同社が発行している1999年から昨年までのヒット商品番付を振り返った。
昨年2004年の番付については「特徴は、新しい価値をうまく消費者にアピールできたものが上位となったこと。数年前までは安さを売りにした商品が上位だったが、2004年の上位に安いから売れた商品はほとんどない。安さを前面に出して武器にする時代は終わった。松下電器(株)の中村邦夫社長は『ようやく価値組の時代になった』と言い、ユニクロも低価格商品を止める旨の広告を打った。真意はあまりに安さだけの企業というイメージが定着したため、良い品も扱っていることを理解してもらいたいという。今の消費者は多少高くとも本当にほしいものは買ってくれる。安さのみでの集客力は明らかに落ちており、いたずらに値段を下げて、安ければよいというものでなく、企業の価値、ブランドの価値が大切」とした。
ヒット商品の成功例
あるヒット商品を例に、成功の秘訣を「(1)過去に失敗したチームをやる気がある限り使い続けること、成功は失敗から学ばなければならない。(2)提案時にトップが反対すること、みんながいいねという品物ではインパクトがない。(3)競合他社やライバル商品に対していかに違いを出すかばかりを凝視するのでなく、消費者を見るという原点にもどること」
消費は一人多極化に
「今、消費者の心を掴むのは非常に難しい。豊かな世の中で必死にならなくとも生きていける。足りないから欲しいという飢餓状態は今の市場にほとんどない。消費は二極化どころでなく、一人多極化。一人の人が生活シーンに応じて自分の物差しを持ち替えている。例えば辰巳渚さんの著書「なぜ安アパートに住んでポルシェに乗るのか」は言い得て妙。これは特別な日に1万円のフランス料理を食べた人が、翌日にコンビニ弁当を食べるということも同じで、欧米では理解されにくい感覚でもある」と、日本進出の脅威が伝えられながら伸び悩んでいるという欧米小売大手にも触れた。
さらに別の消費として「激辛カレーは、おいしいから売れるものではない。これを通じて、情報の共有、コミュニケーションする。話題作り。コレクション、ネットオークションなどは集める課程、買うまでの課程が面白いから買うプロセス消費。伝統的なものでは宝くじが当てはまる」と説明。
近年の買物の傾向を「ウィンドーショッピングが増えた。平日、会社の近くの店で現物を見比べて、家に帰ってネットで価格を調べ、一番安いものをネットで買う。そして土日を自分の好きなことをする時間にするという。他の楽しみが増えたせいか、昔に比べてショッピングすること自体が楽しみという比重が落ちてきたと感じている」とした。
シニア、シングルに注目、2007年に大転換
今後の消費動向については「これまで若者が消費のリーダーと信じてきたが、これからのマーケットリーダーは、元気な60代。昨年初めて実施したシニア調査では、想像以上に消費意欲が高く、元気で若々しいことが分かった。バブル期に結婚1〜2年で子どものいない共働きの夫婦を可処分所得の多い消費のリーダーとして『DINKS』と言っていたが、子どもの教育が終わった60代夫婦は『第二DINKS』と言える」と説明。
団塊の世代が定年退職となる2007年を挙げて「2007年は、日本市場の大転換の年となる。ひとつは消費税8%ととなる予測、さらに2007年をピークに人口が減少に転じること。初めての経験であり心理的萎縮に結びつく懸念がある。そして団塊の世代の定年退社。これが大きくマーケットを変える。団塊の世代のライフスタイルが変わることで、消えたり、沈んだりするマーケット、隆盛するマーケット、新たなマーケットが出てくる。かつて団塊の世代が30代となり結婚。子ども、家庭を持つようになってニューファミリーという言葉とともに、業績を伸ばした会社があったが、30年ぶりに訪れるマーケットの変化と言える」とした。
シニア向け商品としては「実年齢よりも、若々しく、精神年齢にも開きがあるため、50代60代向けとして開発すると陳腐になってしまう難しさがある。さらにシニアは健康面、金銭面など個人差が拡大する。平均像は虚像であり、一人ひとりにきちんとしたマーケティングが必要。非常に面白い市場だが、綿密な計画が必要」だと説明。
もう1つの市場として独身者の増加を挙げ「年々未婚率が上がっており、30代後半の4人に1人が独身。独身男女をターゲットにしたケースは少ないが、決して悪い消費者でない。こういった人向けの商品も必要でないか。独身男性は既婚男性に比べて消費スキルも高く、意欲的。シニアとならんでシングルマーケットにも注目」とした。
今後の消費トレンド
日本の景気については「この10年でリストラが終り、企業が利益を上げられる体制になった。金融システムも何とか立ち直り、中国が脅威から大きなマーケットとなった。この要素が在る限り、長い目で景気については楽観視している。慎重ながら反転攻勢に一歩出た。食の安心安全、インターネット、中国が、産業界、消費、個人生活において、5年から10年続くビッグトレンドとなるだろう」として講演を終えた。
(外山)
