銘酒「鄙願(ひがん)」
越後分水の酒・ほしのを訪ねて
 いま、静かなブームを呼んでいるのが、新潟県分水町大武新田、「越後分水・酒・ほしの」(有限会社星野商店)の「鄙願(ひがん)」。

 端麗で、冷で飲むと極めて口当たりがいい酒。東京から、わざわざ片田舎の酒店を探し当てて買い求めに来るほどの銘酒。

 三条、燕市の産業界では、強いブランド力を誇る「工場を持たないメーカー」は少なくないが、酒の世界でも、昔から、ブランド力のある酒蔵へ、ブランド力のない酒蔵が酒を出荷して、有名ブランドとして市場に出回っていた。

 しかし、酒・ほしのの場合は、これとは全く異なる。

 酒・ほしのは、もともと酒蔵から樽で酒を買い求め、量り売りしていた小売店。

 「もともと鄙願は、『本来は下戸の、田舎酒屋の亭主』と称する星野稔が、女房や息子たちと力を併せて営む〔酒・ほしの〕のささやかなオリジナルブランドである」(鉢山亭虎魚の「鄙願は五十を過ぎてから!」より)。

 というわけで「酒・ほしの」の当主の星野稔さんが、「大洋盛」で知られる阿賀北の大洋酒造、平田大六さんと二人三脚で、20年がかりでつくりあげた酒。

 酒造元は見つけられなくとも、町の酒屋さんに行けば売っているだろうと、どこに酒・ほしのがあるのかも分からず、大武新田という地名を頼りに、分水の町を走っていて、電柱に「酒・ほしの」の看板を見つけた。

 暖簾の下がった店があった。ワゴン車に酒を積んでいる若い番頭さんをつかまえて、「星野酒造はどこか」と尋ねた。奇妙な顔をしているので、「『鄙願』という珍しい酒を買いたいのだが」と言ったら、用件が飲み込めたようで、早速、冬のこととて戸の閉まっている店に案内。

 酒蔵はと尋ねたが、店の前の蔵においてあると言う。しばらく話をしていて、店の奥にいたお年寄りが当主で、事務机のパソコンに向かっているのがお父さん、店に案内してくれたのは息子さんということが何となく分かった。

 とにかく、「一度酒を飲んでから」と、1升、6090円の「鄙願・時分の花」を買い求めた。

 夕食の食前酒に、冷で1合ほど飲んだが、コタツに当たりながら飲む鄙願は口当たりもよく、心地よい香が漂い、早速、店から頂いてきた栞に目を通して、酒のいわれが分かった次第だ。      
                                                (社主)