将来見据えた「福祉ゾーン」を
(福)三条市手をつなぐ育成会
 措置制度、支援費制度を経て、障害のある人が自分らしい自立した生活を地域で送れるよう支援することを目的とした障害者自立支援法が、平成18年4月から施行された。身体、知的、精神の3障害の制度1元化、利用者の原則1割負担などを盛り込んだ同法に対し、「利用者の負担感が強い」との声が相次ぎ、昨年4月に特別対策、今年7月から緊急措置が取られた。それでも障害者を取り巻く環境の厳しさに変わりはない。

 新潟県内の障害者福祉の先進地として知られる三条市の中で、草分け的存在である(福)三条市手をつなぐ育成会(鈴木守男理事長)は、現在、下田地区で支援にあたってきた(福)ひめさゆり福祉会(清水昭理事長)との合併に向け、(福)青空福祉会も含め、話し合いを進めている。鈴木理事長は「せっかくのチャンスなので、目先のことだけでなく、将来を見据えた福祉ゾーンができれば」と意欲的だ。

 三条市手をつなぐ育成会は、昭和34年、新潟県精神薄弱者育成会結成に呼応して結成された、三条市精神薄弱者育成会(三条市手をつなぐ親の会)が前身。昭和40年に県内初の県立月ヶ岡養護学校を誘致、授産施設「杉の子の家」(現・さくらの家)や福祉作業所「すてっぷハウス」の開設など、精力的に活動。当時、会長を務めていた鈴木理事長は「運動体だけでは知的障害を持つ人たちを救うことができない。事業体としての活動も必要」と平成13年に法人化した。平成19年に障害者支援法制定を受け、同会組織を改編。現在は、県指定による障害福祉サービス事業「さくら」、三条市委託による地域活動支援センター「アトム」、相談支援事業「つなぐ」を開設、運営している。「さくら」では、業者から委託を受けた組み立てなどをするほか、挨拶や身だしなみ、調理実習など日常生活に必要なことを訓練している。「アトム」は、地域でのヤマトのメール便配達、一ノ木戸商店街に置かれている花のプランターの世話などをしている。どちらも地域交流にも力を入れている。

 平成18年施行の障害者自立支援法は、身体、知的、精神の3障害の制度の1元化などが盛り込まれた。応益負担として、福祉サービスを利用する際、所得とは関係なく一律定率での負担(原則一割)、入所施設の食費・光熱水費、通所施設(事業)の食費の自己負担などがあり、利用者負担が重くなりすぎないよう所得に応じた「負担上限」や負担額の軽減設定があるものの、利用者負担が増加するケースが生じた。これに対し、鈴木理事長も「現場を知らないで作っている」と憤りを感じていた。それらの声の高まりから、政府は昨年4月から特別対策、今年7月から緊急措置を実施。負担上限の引き下げ、世帯範囲の見直しなどにより、多少は負担が軽減するようだ。

 しかし、依然として障害者を取り巻く環境は厳しい。工場のオートメーション化や海外へのシフトなどから、障害者が介入できる余地は少なくなっている。それでも三条市には、新潟県内はもちろん、全国的にも例のない、知的障害者を雇用する事業主の会「わかばの会」(滝口恵介会長)があり、現在も企業会員15社、施設関係など一般会員17人がサポートしている。今年で40周年を迎える。この会のおかげで、養護学校卒業後の就職先もでき、「通勤寮長久の家」もできた。それらのことから、三条市は「知的障害者福祉のメッカ」と言われ続けてきたが、鈴木理事長は「県内では進んでいる方かも知れないが、他県に比べて遅れている部分もある」と指摘する。

 同会は来年の50周年の節目を前に、ひめさゆり福祉会と来年4月の法人合併に向け、今年初めに合併協定に調印。今は、精神障害者を支援している青空福祉会を交え、話し合いを進めている。

 これは、三条市が新市建設計画搭載事業の見直しにあたり、三条、栄、下田にそれぞれ建設する予定だった障害者施設4事業について、障害の種別にかかわらず、障害のある人が必要とするサービスを利用できる施設サービスの拠点として、身体・知的・精神の3障害を合わせた新障害者拠点施設の建設を決定。事業費も当初予算のほぼ倍に増額された。拠点施設建設にあたり、國定勇人三条市長が「市内の障害にかかわる社会福祉法人が力を合わせた形が望ましい」との考えを示したことを受け、両法人が動いたもの。

 鈴木理事長は「今までにない発想」と國定市長の提案を喜び、「せっかくのチャンスなので、目先のことだけでなく、将来的なことを見据えてやりたい」と意欲を見せる。「昼間、通って来て仕事をして帰る。日中の生活は良いが、本当にそれだけでいいのか。親が健在の間はいいが、亡くなる、または面倒を見られなくなった場合、どうするのか。よく『地域社会で面倒を見る』というが、耳当たりは良いが、具体的に誰が見るのか分らない」とし、何年か前に視察した北海道伊達市を例に挙げ、「仕事はもちろん、例えば障害のある人同士で結婚しても生活できる、それをサポートしてくれる人がいる福祉ゾーンを作りたい。目先のことでなく、もっと先のことを見据え、障害のある人でも生活しやすくしたい」と夢を語る。

 その実現に向け、まずは法人合併後の拠点に、障害者のショートステイ施設の建設をあげる。「急な用事などで親が出かけなければならない時だってある。そういう時に面倒を見てくれる施設があれば。あっても定員が少ないなど、なかなか利用できない。当会のデータを生かせば、事前の調査にも時間がかからない」と鈴木理事長。「障害があるからと言って諦めてはいけない。障害を持っている人が暮らしやすいまちは、そうでない人には、もっと暮らしやすいまちだと考えている。障害を持っている人も、もっと夢を持ってほしい。三条市が近隣に先駆けて、そういうまちになればうれしい。私はそういう運動を声高らかにしていきたい。『障害を持っていてかわいそう。だから何かしてあげたい』というのではなく、まずは事実を聞き、現状を理解してもらいたい。実態を分かった上で応援してもらえれば」と理解と協力を求めている。    
                                               (廣川)