手間と愛情たっぷりの「ひこざぇん」
下田・加工グループ「豊友会」
 その昔、新潟県三条市下田地区の山間部に住む人たちが、クマ狩りに行く時、保存食として携帯したという「ひこざぇん」。今では、下田地区を代表する郷土料理の1つとして人気がある。

 加工グループ「豊友会」(渡辺栄子代表・会員23人)では、オール下田産の農作物で「ひこざぇん」を手作りし、販売している。

 渡辺さんは「無添加で安心して食べられる食品なので、もっと大勢の人に食べてもらいたい」と話している。

 もともと豊友会は、豊かな村づくり講座を受講した卒業生の会として発足。米など地元の農作物を活用した何かができないかと行政などと一緒になり、「ひこざぇん」などを作り始めたのは10年ほど前から。その後、会名に「加工グループ」が付くようになった。現在は、ひこざぇんとミソ、ミソ漬けを作っている。

 同会で作る商品は、米も大豆もすべて下田産の農作物を使っている。添加物を使わず、昔ながらの作り方を守り続けている。

 ひこざぇんは、下田産コシヒカリを使用。炊き上がったらすりこぎで適度につぶし、熱いうちに握る。それを木のヘラに刺し、わらじ型に広げる。そこにエゴマやミソ、砂糖、みりんなどで味付けしたミソを付け、ほんのり焦げ目がつき、香ばしい香りがしてきたら出来上がり。

 同会では、ミソを付けずに焦げ目がつく程度まで焼いたひこざぇんと別包装したミソをセットで冷凍し、お土産品として、いい湯らていや大谷ダム、みちの駅などで販売している。帰郷した際に買い求める人も多い。

 「昔は1つに2、3合使っていた」と渡辺さん。それだとなかなか食べ切れないため、1つ130グラムの「ミニひこざぇん」にした。ミソも家庭ごとに味が違ったが、研究を重ねて今の味になった。

 素朴で懐かしく、飽きのこない味が評判を呼び、今ではいろいろなイベントに引っ張りだこだ。「おばあちゃんの作ったひこざぇんは美味しい」と孫にも好評とか。美味しさの秘密は、「たっぷりの手間と愛情」とのこと。

 会員の多くが住んでいる森町地区の森町小学校では、学校教育田で収穫した米を使い、ひこざぇんを作る。指導にあたった渡辺さんは「最初は200グラムくらいで作っていたが、どんどん大きくなって、今では400グラムに。それを1年生でもペロリと食べてしまうのには驚いた」と笑う。「整えるのも自分でしたいという子も多い。ハート型にする子もいる」と会員も目を細める。

 同会有志9人が運営している漢学の里しただ内のレストラン「庭月庵悟空」では、お土産品よりも少し大きな160グラムのひこざぇんが味わえる「ひこざぇん定食」が人気。申し込めば、ひこざぇん作りなどの体験もできる。

 ひこざぇんなどの商品は、荒沢地内の農産物加工施設で作っている。施設内は笑い声が絶えず、「言えないことはない」という会員たちの様子は、まるで仲良し姉妹のよう。渡辺さんは「自分1人ではできないし、自分だけ良ければいいわけでもない。みんなが良くならないと、会も良くならない」と長続きする会の秘訣を語る。会員も「ここにいると楽しい」「ここでの作業とおしゃべりが一番のボケ防止」などとにっこり。その和気あいあいとした雰囲気と温かさが商品からも伝わってくるようだ。

 渡辺さんは「無添加で、1つずつ手作りしているので、子どもにも安心して食べてもらえると思う。腹持ちもいいので、おやつにもピッタリ。多くの人に下田の味を楽しんでほしい」と、ひこざぇん作りに力が入る。   
                                                (廣川)