
桐を使った家具や雑貨などを製造、販売する新潟県加茂市加茂新田、(株)イシモク(石山陽右社長)は、このほど、総桐スピーカー「felicite(フェリシタ)」を開発。5月の発売から2カ月ほどで、すでに10数台の注文がきており、「耳に優しく、やわらかい音が出る」と注目を集めている。
さらに、今後は総桐の5・1サラウンドシステムの開発にも着手する考えで、同社の総桐のインテリアと組み合わせての「上質なインテリアで聞く上質な音」を追求していく。
フェリシタの開発の発端は、石山社長が北海道で購入した1台のオルゴール・ムーブメント。
このオルゴール・ムーブメントをいろいろな素材に組み合わせて音を聞いたところ、ほかの素材に比べ、桐素材の時に鳴らした響きが、非常に耳に優しく、やわらかい音が出ると石山社長らは感動。桐を使って、スピーカーを作ってはどうかと考えるようになる。
日本の楽器として代表的な琴。その繊細で上品な音を奏でる琴の本体は桐でできている。しかしながら、スピーカーの素材としての桐となると、「桐のような軽い素材は共振するからダメ」という意見が一般的だった。
それでも、「スピーカーとして桐を通した音はきっと耳に優しく、やわらかい音が出るはず」との石山社長の思いは強く、ついに2年ほど前から開発に着手。
試作を繰り返し、一応の形を作ると、新潟県IDSデザインコンペに出品。しかしながら、音を追求した結果、デザインにまで手が回らず、ノミネートされなかった。それでも、あきらめずにさらに研究、開発を進めていると、新潟県工業技術総合研究所県央技術支援センターから協力の申し出があり、共同研究開発がスタート。
県央技術支援センターは、スピーカーとしての形を模索しながら、音のデータを取り、イシモクは桐の素材のやさしさなどの特性を生かし、あらゆる技術を駆使してチャレンジ。そして1年がかりでの共同開発が成功し、クリアーな音でボーカルや楽器の高音、低音が美しいスピーカー、フェリシタが完成。
このフェリシタは、イタリアの音楽用語で「誕生の喜び」を意味し、苦心の末に開発にこぎ着けた思いが込められている。石山社長は「とても満足なものができた。音としても、デザインとしても満足。ただ、作り方が難しいのが大変なところ」と笑う。

フェリシタは樽を半分に割ったようなデザイン。大きさは、幅220ミリメートル、奥ゆき260ミリメートル、高さ400ミリメートルで重さは3・9キログラム。再生周波数は40キロヘルツから50キロヘルツでクロスオーバーは2キロヘルツ。
桐材の多孔質性を最大限に活用しており、ボックス内面をブラスト加工。ボックス内側そのものを吸音材として活用し、逆位相音を消している。また、ユニット以外は、グラスウールやフェルトなどの外乱要因になりかねないため、桐以外の素材は一切使用していない。
樽を模した背面板のラウンドは、スピーカー内部の平行面を無くすため、逆位相音の多重反射を抑制し、桐の多孔質と相まってすみやかな吸音効果をもたらす。
スピーカーから出た正位相音は発信直後からさまざまな外乱を受ける。スピーカーの取り付け板も不要輻射や共振などの外乱要因となるため、取り付け板や天板の微妙なラウンドで抑え、スピーカー本来の音を再生。
さらに、底面バスレフポートを採用し、シンプルなフロントデザインを実現するとともに、指向性の影響を受けない重低音を取りだせるほか、切れ味のいい中低温も再現できる。
ある専門家に依頼した試聴結果では、「小型スピーカーとしては驚異的な再生範囲を実現し、全音域で音の切れ、定位、透明度が抜群。さらに音質にザラツキがなく、適度な濡れ感を残して再生できる世紀の絶品。素直な音色とクリアーで追従性に優れた質の高い再生力は高く評価できる」との賛辞を得ている。
背面板はクリアーと焼杢の選択が可能で、価格は本体価格が1ペアで、クリアーが税込15万7500円、焼杢が税込16万3800円。また、「音は実際に聞いてみないと分からない」とし、同社のギャラリーで試聴することもできる。
最高の結果を得られた総桐スピーカーだが、石山社長の音に対する追求はまだまだ続く。そこで、現在、進行中なのが総桐の5・1サラウンドシステムの開発。
さらに、その先には同社の総桐のインテリアも組み込んだ空間の演出。「音と空間を一体化したい。音だけがすばらしくても、貧弱な空間では物足りない。逆に貧弱な空間で音だけがすばらしいというのも…。上質なインテリアの中で上質な音を聞いてほしい」と、石山社長の挑戦はまだまだ続く。
問い合わせは、同社(TEL0256・53・4111)へ。
(石山)
