最終年度を迎えた五十嵐川復旧事業
7・13水害時流量でも安全 常盤・嵐川2橋供用開始は次年度に
悪夢の7・13水害 4年前の7月13日に三条市などを襲った7・13水害。新潟県三条市では、死者9人、重傷者1人、被害棟数1万935棟、被害世帯7511世帯という甚大な被害を受けた。

 「2度とあのような災害を起こしてはならない」と、直後から始まった五十嵐川災害復旧助成事業。五十嵐川災害関連事業なども含めると360億円を超える事業費を投じ、5カ年計画で進んでいる復旧事業も、今年度末で期限を迎える。

 現在の工事状況は、河道改修工事では、一部工事が残っているものの、すでに目標としていた流下能力、毎秒1800立法メートルを確保している。改修前は一部で毎秒1200立法メートルのところもあり、7・13水害を引き起こす結果となったが、流下能力が上がったことにより、現在では、7・13水害時相当の流量があった場合でも安全は確保された。

 橋の架け替え工事は一新橋が平成19年6月に、御蔵橋がことし6月に供用開始。架け替え工事が行われる4橋のうち、残る常盤橋、嵐川橋の供用開始は平成21年度にずれ込む可能性が高い。    
                                                (石山)

流下能力毎秒1800立法メートルに
河道改修はおおむね完了

 五十嵐川災害復旧助成事業の河道改修工事は、新潟県三条市本町地内の信濃川合流点から三条市諏訪地内の渡瀬橋までの約3・9キロメートル区間で築堤、河道拡幅、河床掘削、河道屈曲部の解消、堤防保護のための護岸の設置、漏水対策などを実施した。

 JR信越線の鉄橋から渡瀬橋までの上流部分までの約2キロメートル区間は、破堤箇所や越流個所を中心に護岸工事などが進み、平成18年度までに、掘削、築堤を終え、全区間で、普段水が流れる部分の低水護岸工事が終わった。

 上流部での工事が進む一方で、JR橋から信濃川合流点までの下流部、約1・9キロメートルの区間では、川幅を大幅に広げるため、移転が必要となる390棟の移転交渉が行われていた。そして、平成19年1月から下流部の川幅の拡幅工事に着手。19年度末には、橋梁や排水機場などの構造物付近の取り付け区間を除き、掘削、築堤、護岸工事は完了した。

 現在は、余裕高分の堤防嵩上げ工事や堤防天端舗装を実施している。ただし、橋梁の掛け替え工事などの進捗状況により、その付近の工事が21年度にずれ込む可能性がある。

 それでも、すでに一部区間でトンパックを積み上げるなどの水防対応をすることにより、すでに目標としている流下能力、毎秒1800立法メートルをクリアしている。

 改修工事前は、一新橋から常盤橋の区間が流下能力、毎秒1200立法メートルだったが、約1・5倍の流下能力となった計算になる。

 7・13水害時には、毎秒2000立法メートルの流量があったとされ、今回の改修工事により、改善された流下能力、毎秒1800立法メートルと差し引くと、毎秒200立法メートルの差がまだあるが、大谷ダム、笠堀ダムでの対応で200立法メートルはダムカットすることが可能で、万が一にも、再び7・13水害当時の状況が襲った場合でも安全は確保されたことになる。

常盤H21秋・嵐川H21末
2橋供用開始間に合わず

現在の4橋の様子。上から一新橋、常盤橋、御蔵橋、嵐川橋
現在の4橋の様子。上から一新橋、常盤橋、御蔵橋、嵐川橋
現在の4橋の様子。上から一新橋、常盤橋、御蔵橋、嵐川橋
現在の4橋の様子。上から一新橋、常盤橋、御蔵橋、嵐川橋
 五十嵐川災害復旧に伴う渡瀬橋下流の橋の架け替え工事は、五十嵐川災害復旧助成事業として、嵐川橋、常盤橋、一新橋の3橋が県の事業として、市の事業として御蔵橋の架け替えが行われ、計4橋が新しくなる。

 すでに、一新橋が平成19年6月に供用開始、御蔵橋もことし6月28日に供用開始となり、まさに嵐南、嵐北地区を結ぶ架け橋となっている。

 残る常盤橋、嵐川橋の2橋については、早期の供用開始を目指して工事が進んでいるが、今年度末の期限には間に合わない見通しとなっている。

 常盤橋は、平成18年2月に仮橋を設置し、工事に着手。下部工はすでに終了しており、現在は上部工の制作、取付道路の工事が行われている。橋の概要は、橋の全長が107・4メートル。幅員は15メートルで、2車線両側歩道となる。供用開始は21年秋を目指している。

 嵐川橋は、平成18年12月に仮橋を設置し、工事がスタート。4橋ではもっとも遅い工事着手となった。現在は、下部工を施工中で、完成後、上部工に取り掛かる。橋の概要は、全長111・9メートル。幅員は9・2メートルで、2車線片側歩道となる。供用開始は、遅くても平成21年末までには行いたい考え。

 すでに供用開始になっている2橋では、一新橋がもっとも早く供用開始となった。一新橋は、ほかの3橋に先駆け、平成16年度中に工事着手、平成19年6月に供用開始。その後、11月には仮橋の撤去も終わり、工事は完了。総事業費は約15億円。デザインは金属に木目調の塗装を施したものとなっており、市民による検討会が、架け替え以前に欄干などが木だったことをイメージし提案、採用されたもの。

 ことし6月28日に供用開始された御蔵橋は、平成17年度から三条市が事業主体となって工事を進めてきたもの。工事費は約8億2000万円。新橋は、古い橋の橋脚、橋桁などをそのまま利用した。

 橋梁のほか、構造物関係では、6カ所で排水機場の工事を行った。

 6カ所のうち、現在も工事が行われているのは、島田川排水機場と新通川排水機場の2カ所。ほかの、本町4丁目地内の新設排水機場、間の川排水機場、新曲渕排水機場、曲渕排水機場についてはすでに稼働できる状態。

 このうち、本町4丁目地内の新設排水機場は、堤防の位置を新たに川に近づけたために、それまでの堤防との間に窪地が出来ることから、新たに設置したもの。配水能力は毎秒0・35立法メートル。

 また、間の川排水機場は、配水能力を毎秒1・22立法メートルから、毎秒1・93立法メートルにアップ。

 そのほかにの排水機場については配水能力は変わっておらず、川の拡幅に伴う工事。

五十嵐上流・大平川
H19までに工事完了

 五十嵐川の復旧事業では、五十嵐川災害復旧助成事業のほかに、渡瀬橋から上流部の漏水対策の五十嵐川災害関連事業、さらに上流の五十嵐川の支川、大平川の災害関連事業も含まれる。いずれの事業も平成16年度から工事に着手。平成19年度には工事は完了し、安全性は高まっている。

 五十嵐川災害関連事業は、三条市西大崎地内の渡瀬橋から三条市島潟地内までの約4・3キロメートルの区間で行われた漏水対策で、総事業費は約25億円。この区間は、7・13水害では水があふれることはなかったが、一部に水を通す軟弱な地層があったため、そこを通って堤防から漏水した。今回の復旧工事では、その漏水した箇所、6工区、延べ5945・8メートルで、裏腹付盛土及び遮水矢板工事を実施した。

 大平川災害関連事業は、三条市長沢地内を流れる五十嵐川の支川、大平川の復旧事業。大平川も7・13水害時には、水が溢れ、河床が削られ護岸が倒壊するなど、周辺の水田約20ヘクタールで甚大な被害を受けた。この復旧事業では、特に被害の大きかった大沢川との合流点から県道下田見附線の新大橋までの1・2キロメートル区間で実施。総事業費8億円を投じて、築堤、河道拡幅、河道の屈曲部の解消、護岸を設置。これにより、流下能力は毎秒25立法メートルから毎秒85立法メートルにアップした。

記憶を風化させてはならない
破堤現場にメモリアルパーク

 また、新潟県と三条市では、この7・13水害の記憶を風化させないためにも、三条市諏訪地内の破堤現場に(仮称)水害メモリアルパークを建設する。

 メモリアルパークの面積は約2000平方メートル。助成事業によって発生した掘削残土を有効利用し、公園用地を造成する。

 現在は、県によって造成工事が行われており、9月中には完了。その後、市によって整備が行われる。

 整備内容については、記念碑やモニュメント、休憩施設など具体的には、今後、市が内部で検討するが、市民の憩いの場となるよう整備する。

 このメモリアルパークの建設は、県の地域プロジェクト事業として、五十嵐川と中心市街地によるコラボレーションとして実施するもの。

 河川空間を利用した公園などの整備やイベント、維持管理を行い、7・13水害により衰退した三条市街地の商店街の集客を促し、商店街の活性化を支援。メモリアルパークの整備のほか、川の側帯の整備も行われる。