
少子高齢化で、人口減少の課題を抱えている新潟県の主要課題のひとつが累積赤字の膨らむ県立病院の経営であり、特に県央地域にある県立吉田病院、県立加茂病院の2つとも毎年度、巨額の赤字を出し続けている。
新潟県県央地域の中核となる三条市には、県立病院がなく、済生会三条病院、厚生連三条総合病院、三之町病院など民間の経営による病院が多い。
結果的に、中核となる病院が欠落、救命救急センターの誘致など地域医療体制の充実が後手に回っているともいえる。
加茂病院 病床稼働率66・9%
新潟県には、新潟市の県立がんセンター、新発田市の県立リウマチセンター、長岡市の県立精神医療センターなど専門性の高い病院、新発田市の県立新発田病院、上越市の県立中央病院など大規模な総合病院、不採算地域に指定されている松代、柿崎、津川、妙高の四病院、そして、吉田、加茂、坂町、六日町など、巨額な新規投資もないのに赤字に悩む中規模の病院がある。
「泉田裕彦県知事は、県知事に就任した平成16年当時は、県立病院の役割について、『一般医療、高度医療、へき地医療、災害時の医療』としていたが、その後『県立病院でなければできない医療はない』というように変ってきている」(梅谷守県議)と、泉田県知事の発言のニュアンスが変っている点を指摘している。
江口孝雄病院局長は、「知事の最初の発言は、現実に果たしている県立病院の役割を述べたもので、後段の発言は、究極、突き詰めた話。県立病院のないところでも、地域医療は崩壊していない。厚生連などが地域医療を担っている」と答えている。
単なる言葉の違いではなく、赤字続きで、平成19年度決算では、累積赤字が429億円余に膨れ上がり、資本剰余金248億円余を差し引いても180億円余の未処理欠損金が出ている。
このまま、赤字を垂れ流していては、いつか、県立病院経営が成り立たなくなることは明らか。
そのなかで、新しい病院を建設したばかりの新発田病院が、8億円余の赤字を計上し、中央病院も平成9年に新病院を建設、18年度の赤字5億円余から1億円以上赤字を減らし19年度4億円余の赤字だが、これは到来を見据えた投資的なもの、老朽化した病院で、大規模な投資を行っていない吉田病院が6億円余、加茂病院が5億円余も単年度赤字を計上しているのは重大な課題。特に加茂病院にいたっては、病床稼働率が66・9%と低く、「加茂の皆さんから、『加茂病院は、職員の方に入院はだめだと言われて、入院できない。なぜ入れてくださらないのだろう』と聞かされている」(松川キヌヨ県議)と入院を断られており、病床稼働率が70%を上回ったことのない背景を指摘している。
医師の不足は全国的で、特に地方都市では深刻だが、その中にあって、医師が勤めたがる病院は、大規模な病院、機器の整備されている専門病院で、勤務医が少なく、負担ばかり多い病院には行きたがらない傾向が、加茂病院のケースにも現れている。
そして、医師不足に悩む県立病院は結局、診療科目を減らすとか、診療の日数を減らさざるを得ず、ますます患者数が減って赤字が深刻の度を増すことになる。
県央地域の県立病院経営の問題は、深刻になるばかりで解決の糸口は見えていない。
勤務医の負担軽減
応急診療所で一次救急
県央地域の救命救急医療体制は、厚生労働省の考えている救命救急センター、すなわち三次救急医療施設の誘致には程遠い。
救命救急センターは、命にかかわる重篤救急患者の救命医療を行うことのできる施設で、救急医療の最後の砦とされる。重篤な救急患者に365日、24時間、高度な医療を提供するための機能を持ち、通常は受診できず、一次、二次救急医療施設からの搬送や、救急隊などの判断によってのみ患者を受け入れる。
いま、県央地域で、旧三条東高校跡地に建設しようとしている応急診療所は、ここで言う一次救急医療施設で、全国的に、救急車の利用が増加傾向にあって、風邪による発熱などでも、救急車で休日診療などを行っている病医院に駆け込むことから、勤務医の負担が大きい。
これを一次救急医療施設で診断して、救急とみなされる患者については、総合病院や専門病院で手当てしようというもの。もちろん、小池清彦加茂市長の暴論「頭の割れている患者を応急診療所に運んだら死ぬ」というような馬鹿なことは起こり得ない。救急車で搬送する際に、誰が見ても重傷の患者は振り分けられるからだ。当番医の医師の負担を軽減することにもつながる。
慢性的な赤字の県立病院、それも病院がないへき地とはほど遠い、県央地域の県立病院が2つ、大きな赤字を出し続けていたのでは、県内にある救命救急センターのある、新潟市の新潟市民病院、新発田市の県立新発田病院、長岡市の日赤病院、上越市の県立中央病院のような体制を築くことはほとんど不可能だろう。
もちろん、小池市長の「県立加茂病院を移転改築し、救命救急センターを兼ね備えた病院に」という発言は、加茂市民向けのパフォーマンスで、まったく現実味がない。
医療の面からも、せっかく救命救急センターを設置できる医療圏と認められながら、県央地域の市町村の足並みの乱れが、それを不可能にしている。
(社主)
