心の故郷 下田の空気を楽しみながら
陶芸工房La Puerta(ラ・プエルタ)
 新潟県三条市滝谷に、築200年という古民家の米蔵を改装した陶芸工房「La Puerta(ラ・プエルタ)」がオープン。スペインタイルの絵付けや、手びねりの陶芸教室などを開いている。

 プエルタで創作活動や、教室の指導にあたっている小林恵さんは、スペインで陶芸を学び、父の故郷で、自身にとって心の故郷ともいえる下田地区を創作活動の場所の1つに選んだ。「緑が多く、作品づくりに没頭できる」という。

 「La Puerta」は、スペイン語で門や扉を意味する言葉。「扉からたくさんの人が集まる空間に」との願いが込められている。この工房は、市内外の作家作品の展示で知られる古民家ギャラリー「保ーむぎゃら里ー瑞門」の敷地内で、もともとは米蔵。

 外装には米蔵の雰囲気を残しながら内装は一新して欧風に仕上げており開放的、イメージは「田舎の石造りの家」だ。

 小林さんはスペインの工芸専門学校で陶芸を学び、布で包みこむような表現をした白磁の作品「エンバラヘ つつみこむ」を第2回タラベラ市ビエンナーレ国際陶芸コンクールに出品して第2位を受賞、白磁と樹脂を組み合わせてクラゲのような透明感を表現した「メデューサ」を出品した第5回サラゴサ市国際陶芸コンクールでは入選などの受賞経歴を持つ。

 また、スペインの陶芸メーカーへ広告用の作品を提供したほか、ゴルドバ/Alfonoso Arisa美術館、タラベラ市役所に作品が収蔵されている。カトラル市のサンタ・ルチア公園には設計、製作、施工プロジェクトに参加して作品を収めた。

 プエルタの教室では、スペインタイルの絵付け体験、手びねりの陶芸体験の2講座を開いていて、主に女性の受講生に人気を博している。

 小林さんは、手描き友禅作家として知られる瑞門の石月恵子さんの愛娘で、共立女子大学文芸学部でも造形芸術コースを専攻するなどしたが、陶芸に興味を持つようになったのは、結婚後、ヨーロッパのジャンルに縛られない陶芸スタイルに出会ってから。

 ご主人の転勤でドイツ・フランクフルトに移り住んだときで、「器だけでなく、彫刻、壁面、オブジェまで陶芸で自由に表現している、ヨーロッパは全体的に陶芸や造形に垣根がない、この様子に魅かれた」と、振り返る。その後、本格的に陶芸を学ぶためヨーロッパ各国のなかから、スペインのカステティールラマンチャ州立タラべラ市のタラベラ美術工芸専門学校を選んだ。

 タラべラ市は、マドリードから1時間ほどの陶芸のまち、「街中が伝統的な陶芸であふれているよう」だという。2001年から2005年までの5年間、このまちで学び、その間、市内の工房で伝統陶器の絵付け、陶芸による造形建築、白磁器土による陶造形などを学んだ。

 特定のジャンルにこだわることなく「西欧の陶芸技法を駆使して、日本の生活に合うような作品づくり、粘土の特性を生かしながら、表現の手段としての作品づくり、自分にしかできない表現の追求」が目標、作家としては国際コンクールへの出展を視野に入れている。

 一方では、「日本の生活に合うような」カップや器などの作品も制作しながら、造形作品での表現は、これも陶芸で表現できるのかと思わせるような作風。「エンバラヘ つつみこむ」は、白磁で「一枚の布を折りたたんだような包み込む立体」を表現、日本人が抱く一般的な陶芸のイメージから飛躍した作品でありながら、どこか日本的な雰囲気を漂わせていることが特徴といえる。

 東京都出身で「下田は父の故郷、夏休みの帰省などで幼少のころからなじみがあった」とし、「緑が多いイメージで、下田の緑からインスピレーションを得たのが『森絵』シリーズです。白磁では雪深いこの地域ならではの風景、たとえば真っ白な雪の上に残る動物の足跡などから作品のイメージが沸きそう」と、好感を持っており「静かで集中できる」ことも挙げた。

 「偶然に生まれるかたち、粘土に任せた方向性でも面白い作品が生まれます」と言い、創作活動に「故郷」下田の魅力を付加して行く。

 しただの作家たちの一員、現在は東京と新潟を行き来しながら活動していて、東京都青山でも陶芸サークルを主宰している。

 問い合わせや体験講座・見学の申し込みは、ギャラリー瑞門内のラ・プエルタ(TEL0256・46・2079)へ。  
                                                 (外山)