
原燃料価格高騰に伴い、上昇を続ける諸物価。「相場物」の青果物は価格転嫁が難しく、生産者の収入は農業資材など生産コストの上昇分がそのまま差し引かれる状態となっている。
(株)三条中央青果卸売市場の青柳茂社長は地元農家の対応について「この春までは実感に乏しかったが、ここにきてようやく対応策を考慮し始めた。これから作付する作物だと、秋口にはなんらかの影響が出始めるかもしれない」と予測。「頭の痛い問題だが、生産者、消費者ともに考え直す機会。地方市場の役割も大きい」と、気を引き締める。
「青果物はその年々の天候が生産を左右し、同じく天候(気温)が消費動向を左右する。その需要と供給のなかで価格が成り立っている商品であり、資材の高騰分を転嫁することは難しい。高騰した分、生産者の手取りが減っているのは明らか」と、青柳社長は生産農家の置かれた現状を解説する。
特に施設園芸では、施設内の気温を上げるための重油、ボイラー本体、ビニールなどが値上がりしているうえ、農薬、肥料も軒並み値上がりし、生産者は今まで以上に燃料や資材を効率的に利用する方法を模索して自分たちの収入を守ろうとしている。
これらの影響については「地元農家の反応は、この春までは他人事という感じだったが、ここにきて真剣に考え始めるようになっている。今から作付けすると、秋口には出荷される農産物に変化が見られる可能性がある」という。
「極論を言えば、JA全農の肥料価格は以前の約5倍、平均してみても1・5倍の上昇であり、ほかにも運賃、梱包資材など出荷に関わるコストも上昇している。これらを打破するのは地域で需要を掘り起こすこと、やはり地産地消ではないか」と、青柳社長。物流コストを抑えることはもちろん、消費者サイド、生産者サイドで意識を変えていくことが必要だという。
稲作だけをみても、高齢化が進む中で高額な農機具を更新するかどうか迷う農家が多い。だが、稲作を止め、生産委託するにしても委託された農家から「採算がとれない」という悲鳴が上がる。ただでさえ日本の農家の先行きは不透明だ。
また、消費者も自身の生活防衛に必死であり、農家自身が消費者の1人でもある。
こういった中で地産地消に未来があるという。ようは消費者、生産者、仲介業者や行政までが意志疎通を図りながら地域の農産物を利用していくこと、約39%と言われる日本国内の食糧自給率の引き上げにも、地産地消推進の取り組みと、消費者教育がカギとなる。
青柳社長は「青果物の出荷時期、いわゆる旬は、非常に短く、供給面で不安もある。根物と言われるジャガイモやタマネギはまだしも、ほとんどの青果物が出荷時期ごとに産地を移動して入荷してくる」とし、「消費者は青果物が安くておいしくなる旬を的確に捉えて利用する。生産者は消費者ニーズに応えられるような作物づくりを今よりもっと考える。消費から生産までの意思疎通を図ることが必要」だとする。
そのためには消費者の「根本的な教育」も避けられない、行政の農業政策は「所得補償や保護政策も重要だが、消費者教育など完全に需要を掘り起こしてから取り組むべき問題であり、順番が逆」だという。
需要喚起というと、高付加価値なブランド農産物の構築なども考えられるが、「現在あるブランドと呼ばれる青果物や魚介類などを含めた品物のなかで、本物と呼べるようなものがどれだけ少ないか。ただ産地を限定して取りまとめればよいというものではない。安易なブランド化はあまりに役人的発想で、消費者のためでなく、生産者のためのブランド化に意味合いがすり替わっている」と警鐘を鳴らす。きちんとした裏付けと安定した供給、品質が重なってこそのブランド化であり、食肉の産地偽装などの問題点も指摘する。
今が旬のエダマメを例にとって「同じ地域であっても圃場(ほじょう)が変わるだけで味は変わる。当市場では仲買人が生の状態で味見をしてから値段を付けるので、同じ産地であっても農家によって値段が変動する。これをとりまとめたから、即ブランドというわけにはいかない」と、端的に理由付けた。
地産地消政策についても「行政が実績や数字をつくるためだけの取り組みは止めてほしい。出荷する数量がまちまちのため、せっかく取り組んでいるのに納入業者や生産者がサービスで成り立っているのが現状。市場には地元産の青果物が集まってきており、市場こそ地産地消の本場といっていい。例えば給食ならば、地元の旬や郷土料理を把握し、きちんと年間の献立をスケジュール化することで状況は変わる」という。
もちろん、一般消費者による地産地消も重視しており、同市場内の県央食品卸売センターが実施する感謝デーにも協力。「徐々にだが、小売への波及効果も見えてきた。感謝デー開催日でなくとも市場に問い合わせがあるほどで、陰ながら今後も支援を続ける」という。
小売店についても「押し並べて加工品が値上がりするなかで、スーパーなど小売りは青果物で各店の独自性をだしていくべきだろう。とあるスーパーでは俗にA品とよばれる青果物のほか、B品と呼ばれる少し見た目が劣る青果物を用意していた。様子を見ると割安なB品が飛ぶように売れていった。消費者自らがよりよい選択をするための知識や教育も必要であり、お年寄りから学ぶべき点は多い」という。
今後の農家について「農家経営はさらに厳しくなるだろう、収入は現在から20%程度、あるいは半減する可能性もある。地元市場として、少しでも時代にあった消費者の求める青果物へ、いい意味での生産誘導、出荷経費の見直し、地元での優先的な消費拡大を行う」とし、地元市場としての役割について話す。
消費行動の在り方についても「宴席などで残される食べ物や、過敏になりすぎている賞味期限。これらを考え直すだけでも食糧自給率はアップできる。これまで浪費を見直す時期に来ている。これは消費者だけでなく、生産者にもいえること、生産コストの無駄はまだ省くことができる」とする。
現在の状況について「モノが溢れた浪費の時代から、モノを大切に使う時代への過渡期。苦しさはあるが、日本人がこれまで積み上げてきた知恵や生活の見直しで乗り切る可能性は十二分にある。消費者、生産者、行政がそれぞれの在り方を根本的に見直し、対策を考えていくべきだ」と、締めくくった。
(外山)
