
経済産業省と中小企業庁が取りまとめている「元気なモノ作り中小企業300社2008年版」に、県央地区から5社がエントリー。その中から、外部講師を迎え、生産方式、品質管理の改善に努めている新潟県三条市土場、(株)マルト長谷川工作所の長谷川直哉副社長に話を聞いた。
2008年版にエントリーされたのは、(株)マルト長谷川工作所のほか、新潟県三条市上須頃、共和工業(株)、新潟県三条市柳川新田、シマト工業(株)、新潟県燕市吉田下中野、和田ステンレス工業(株)、新潟県燕市吉田下中野、吉田金属工業所(株)。
10日には、東京都のホテルグランドパレスで関東甲信越地区のエントリー企業に対する表彰式が執り行われた。
「元気なモノ作り中小企業300社」の認定は、普段は目に触れにくいが重要な役割を果たしているモノ作り中小企業の姿を、広く国民に対して分かりやすく示すことで、中小企業のやる気を一層引き出すとともに、若年層を中心にモノ作り分野に対する関心を持つきっかけになることを狙い、2006年から実施しているもの。
マルト長谷川工作所は、大正13年創業の作業工具メーカー。同社のオリジナルブランド「KEIBA」のペンチやニッパー、プライヤなどは、プロ仕様の切れ味で使いやすく疲れないと、確固たる地位を確立している。そして、その評価は国内だけにとどまらず、広く海外にまで鳴り響いている。
また、最近では、作業工具だけでなく、80年以上をかけて培った技術を応用し、理美容鋏、爪切り、医療用機器をも手掛けている。
長谷川直哉副社長は、「これまで当たり前のことをやってきて、その中で山積みの課題を1つずつ解決してきた。それを今も繰り返しているだけ。別段、ウチが特別すぐれているという意識はない。ただ、国内に46万社の中小企業がある中で、300社に選ばれたことについては、ありがたく、名誉なこと」と話す。
今回のエントリーについて、「自社ブランドを持っていたこと、古くから海外輸出を行ってきたこと、ペンチ専業という中ではアイテム数も多く、歴史も古い。そして、これまでにグッドデザイン賞やIDSなどでたくさんの賞を頂いていたことが今回のエントリーにつながったのではないか」とし、「選ばれたことで、社員のモチベーションが上がってくれれば」とその効果に期待する。
エントリーにあたっては、作業工程や製品などについての厳しい審査をクリア。そうした中で、評価された1つの要因に同社の生産方式、品質管理が挙げられる。
同社では1996年から外部アドバイザーを迎え、「ジャスト・イン・タイム」を究極の目標に見据え、トヨタ生産方式を応用した生産管理システム、MPS(マルト・プロダクション・システム)を導入した。

このMPS生産方式は、@必要な時に必要な物を必要なだけ造る平準化生産A生産量、種類、時間のすべてを平均化して物を造る、が大きな2本柱。
その具体的な成果は、機械加工時間の短縮や在庫の減少などで顕著に現われており、さらに、高品質を安定化させ、作業性の向上により作業工程の削減、それに伴う人件費の削減などにも成功している。
必要な時に必要な物を必要なだけ造る。だからと言って、欠品が許されるわけがない。そうした中で、MPS導入前には百万個もの在庫数が導入後には18万個までに削減することに成功。中でも大きかったのが、金型を交換する段替えの時間を飛躍的に短縮したこと。
長谷川副社長は「これまで、段替えには半日かかっていた。そのため、1つの金型で何万個も打ち、金型が摩耗してきたら、次の金型に交換。そのため、何万個もの在庫を一気につくって、その在庫を少しずつ使っていって、その在庫がなくなったら、また大量に打つということを繰り返していた。それが今では6分40秒で段替えができるようになった。そのため、在庫数も各段に少なくなった」とMPSの成果は確実に現われている。そのために、「万歩計を使って、作業にどれだけの歩数がかかるか、部品を持ってくるのに時間がかかるなら、近くに置けばいいボルトを1つ外すのに何秒かかるか、それを効率化するためにはどうしたらいいか」と、1つ1つの作業を徹底的に検証し、効率化を図り、これからもさらなる効率化に努める。
品質管理にあたっては、商品のバラつきを少しでもなくすように、検討を重ねている。「これだけ、鋼材の値段が上がっていると、もったいないのは不良品。不良品のロスを無くすことが、経営の質を高めるとともに、お客様の信用につながる」とし、「数字もそうだが、刃物というのは切れ味や長持ちというところも大切になってくる。ウチの商品は合わせもの。コンマ10分台、100分台というところで合わせている。そこでも、いかにバラつきを少なくすることができるか」と、今後も改善に努める。
今回の元気なモノづくり中小企業へのエントリーを自らを見直す機会にしたいとする長谷川副社長。「値上げ、値上げという厳しい環境の中で、外部のアドバイザーを招いて、いろんな生産方式や品質管理の改善にチャレンジしている。逆にこういう状況だからこそ、生産効率を上げていかないと生き残っていけない。生産方式や品質管理については、推し進めている成果も出てきている。しかし、長いことやっていると停滞気味になってくる。今回、賞を頂いたということは、優良企業と見て頂いている証拠。今回の受賞を契機に改めて、そういう目で見てもらっていると気を引き締めていきたい」と、さらなる価値ある企業となるために取り組んでいく。
(石山)
