
新潟県三条市西本成寺二、(株)ニューテック(小嶋弘榮社長)は、ダイカスト金型・鍛造金型の設計、製造を手掛ける金型のプロフェッショナル。主力の自動車部品を中心に、電子機器から医療器具、スポーツ用品に至るまで、さまざまな製品の金型を製作する。
7・13水害や中越地震では大きな被害を受けながらも、平成10年の創業以来、黒字経営を続けている。そして、鋼材値上げという厳しい状況にある現在も社内努力でカバー。来年3月には、総事業費約4億円をかけて新工場などの設備を充実させ、さらに厳しさを増すことが予想される今後に備える。
(株)ニューテックは平成10年10月、(株)コジマを引き継ぐ形で創業。ダイカスト金型の設計、制作を中心に鍛造金型まで幅広く手掛けた。
小嶋社長は「バブル崩壊後の厳しい時代に創業することになったが、(株)コジマの頃、営業部長をやっていた時に、県外のいいお客さんをつかむことができた。そして、時代はリサイクル。車は軽量化のために、パーツにアルミを使うことが多くなり、特にニューテックを創業してからは順調に推移することができた」と、人との出会い、時代の流れをつかんでの黒字経営。
特に、平成14年から16年までは順調に進み、平成15年12月には、機械の自動化、大型化を図るため、敷地面積992平方メートル、延床面積858平方メートルの鉄骨造2階建の第3工場を建設。
順風満帆に進むかと思われた矢先、平成16年7月13日に三条市を襲った7・13水害。嵐南地区の同社も甚大な被害を受けた。工場や事務所の1階部分は水没し全滅。新設した第3工場や機械は1年も経たないうちに大きな被害を受け、その被害総額は約2億円にも上った。
それでも、同社の心臓部とも言える設計部門とモデリング部門が2階だったこと、そして多くの取引企業からの支援もあって、復旧は進んだ。小嶋社長は「ペットボトルやカップラーメン、長靴、Tシャツなど、取引先の企業から多くの支援があった。中には社長さんも一緒に泥かきに来てくれるところもあった。これも、普段からいい付き合いができていたおかげ。本当に助けてもらえた」と感謝を忘れない。
なんとか7・13水害からの復興も果たし、順調に動き出した頃に襲ったのが、10月23日の中越地震。会社自体に大きな被害はなかったものの、設計部門の職員の多くが長岡市や小千谷市出身。そのため、出社できず、仕事に遅れを来たす結果に。
設備投資の直後に襲った7・13水害に加えて、中越地震という2度の災害に襲われたが、それまでの蓄えでなんとか乗り越えることができた。
その後、それまでは外注に出していた鍛造部門を、引きあいが多くなったことから独立させ、平成18年4月にはスカイコア(有)を設立。
さらには、一昨年の暮れには厳しい審査をクリアし、トヨタの子会社、アイシン精機(株)との取引も始まった。
そして、これまで引き合いがあってもできなかった大型の金型に対応するため、1500から1600トンクラスの機械の導入。分散していた作業を1カ所にまとめ、効率化を図るため、約4億円の事業費をかけて来年3月の竣工を目指し、第4工場の建設に入る。

新工場は新潟県三条市西本成寺二地内の同社敷地の隣に建設。敷地面積は2810平方メートル、建築面積は1587平方メートルと、既存の3工場を合わせた規模。当初はことしの秋頃の竣工を計画していたが、改正建築基準法の影響で遅れ、現在は来春の竣工を目指している。
鋼材の値上りという厳しい状況の中で新工場の建設に踏み切る小嶋社長。「材料の高騰は本当に厳しい。仕事量は変わらないが、利益幅は小さくなってきている。1つ1つ目に見えるところは倹約し、少しでも仕事のスピード化を図っている。そこで、新工場を建設し、第1工場から第3工場の機械をできるだけ集約し、これまで各工場に分散していた作業をできる限り、ひと所にまとめ、効率化とスピード化を図る。そして、それに合わせて、これまで800トンクラスまでしか受注できなかったが、1500トンから1600トンまでできる機械を入れる」と話すが、「逆にこれをやらなければ、生き残っていけないというところもある」という厳しい現実も。
「ウチは車の部品が主力だが、電子機器から医療器具、スポーツ用品、信号の枠を作ったこともある。とにかく、基本的には引き合いのあった仕事は断らなかった。そして、他社が嫌がるようなメンテナンスなども、お客様の要望に応えてやってきたことで、お客様の信頼を得ることができた」ことが、創業以来の黒字経営の秘訣。
鮨屋の板前というユニークな経歴を持った小嶋社長が、社員に話していることの1つが「悪く思うな良く思え。良く思えば良く思われる」。小嶋社長が鮨屋の板前をやっていた当時に、もっとも仕事ができなかった同僚に言われた言葉だという。「その時に1番仕事ができないとバカにしていた板前に言われた言葉。それが、ズドーンと来た。当たり前の事だけれど、非常に大切なこと。人でも仕事でも、自分がぶつかった事を悪くとらえれば何でも悪くなる。しかし、すべて良い方向にとらえればそれは良いこと。そう思うだけで、非常に得をすることができる」と、プラス思考を胸に厳しい状況を乗り越えていく。
(石山)
