燕三条ラーメン?燕ラーメン?
地域資源となりえるか
燕むすびフェスタで販売された「背油ラーメン」 「新潟4大ラーメン」などとして紹介されている、背脂たっぷり、まるでうどんのような極太麺、醤油味のラーメンを指す「燕三条系背脂ラーメン」。このネーミングに当の燕・三条地域では違和感を抱く人が少なくない。発祥の地とされている燕市内だけでも、1つの概念だけで「燕ラーメン」とは言い切れず、「三条ラーメン」もあっさり味の醤油ラーメン、売り出し中の「三条カレーラーメン」などバラエティーに富む。「燕三条系背脂ラーメン」が燕・三条地域で親しまれているラーメンということは間違いないのだが…。

 背脂たっぷり極太麺の醤油ラーメンの発祥は、今は廃業しているが新潟県燕市燕(穀町)にあった福来亭本店で「燕市内の洋食器工場で働く人たちへの出前として、背脂でスープが冷めにくく、極太麺で伸びにくく腹もちがする、工場で汗を流して働く人向けに濃い味に」などという。インパクトのある見た目や、煮干しなどのダシに脂のコクが加わったスープ、もっちりとした食感の麺が一体になった味が受け、「新潟あっさり醤油」、「長岡生姜醤油」、「巻町濃厚味噌」などとともに「新潟4大ラーメン」の1つとして県外にも知れ渡ってきている。

 福来亭本店の直接的流れを組む店のほか、背脂ラーメンを独自にアレンジして提供する新規店や、ゆったりとした店内で主に家族連れをターゲットにした店、居酒屋兼ラーメン屋のような店など、一口に「燕三条系」とくくっても提供される店やシーンはさまざま。

 ただ、「喜多方ラーメン」のようにご当地ラーメンとして地域や組合などを挙げて「燕三条ラーメン」として売り込む動きは今のところ見られない。3月22日に燕市吉田産業会館で開催された、燕市合併3周年記念市民交流イベント「燕(えん)むすびフェスタ お隣さん、こんにちはPart2」では燕麺類食堂組合青年部が「燕味継承中華そば」と銘打って、「背脂ラーメン」を販売して来場者から好評だった。こういったイベントでの販売は初めての試み、前評判も来場者の反応も良かったが同青年部では「今後の予定は未定」としている。

 一方、三条市内で「背脂ラーメン」は、燕市と比較すると少数派。「新潟あっさり醤油」に似た、あっさり醤油味の細麺を使ったラーメンを「昔から三条にあるラーメン」とする三条市民が多く、「燕三条系背脂ラーメン」のネーミングに違和感を抱いているようだ。

 燕市内でもあっさり醤油味のラーメンを提供する店があり「工場で働く人たちのニーズに応えたのが背脂ラーメンならば、当然、事務労働の人のニーズもあったはず」という意見もある。

背油かける作業もインパクトは大きい 燕市燕地区観光協会が編さんした「燕ラーメンお遍路マップ」掲載の39店を見てみても、背脂ラーメンのほかに、味噌ラーメン、タンメン、つけメンなど各店一押しの一杯はさまざま。メニュー表ではラーメンを「中華そば」と表記する店が多く、ラーメン店などのほかに、寿司店、焼肉店、割烹食堂などが掲載されているのも独特。同観光協会事務局によると、市内には約100店のラーメンを提供する店があるといい、燕市のラーメン店を観光資源の1つとして紹介している。

 官民挙げた燕三条ブランド策定の動きもあり、全国区になりつつある「燕三条系背脂ラーメン」を、地域を挙げて売り出しては…。と、考えるのは自然な流れ。ましてや今年は「新潟大観光交流年」だ。だが、たかがラーメン、されどラーメンに強い思い入れを持つ人が少なくないこと、増加しつつあるとはいえ地域内のすべてが「背脂ラーメン」ではないことなどなどがネックになっている。燕市単独ではあるが、地域内に多種多彩に存在するラーメン店を取り上げるという燕地区観光協会のやり方が、これらを尊重するには最良なのかもしれない。

 今のところ「燕三条系背脂ラーメン」の知名度が上がった恩恵を授かっているのは、地元ではマップを製作した同観光協会や一部の店舗、ネット販売用などに商品化した業者、外部では雑誌社、評論家、カップ麺などを商品化した大手メーカーなど。

 工夫次第でまだまだ地元に人を呼び寄せる力がある「地域資源」の1つと言ってもいいのに、地元に恩恵が少ないどころか、外部にうまく利用されている感さえある。真に地元のためになること、とはなんなのか。

 新潟の代名詞的な米や酒以外にも豊富な農産物や、食、歴史文化、産業。簡単に一くくりにできない多様さ、面白さが、燕・三条地域や新潟県の魅力なのかもしれない。「4大ラーメン」などという概念に縛られることはない。
                                                (外山)
背油ラーメン