品質強化、仕組の提案で信頼に応える
(株)田中衡機工業所・田中康之社長
 工業、物流、農業、医療、介護、廃棄物処理まで、あらゆる業界を縁の下で支える計量機。「信頼に支えられたハカリ。品質管理体制を強化し、お客様、市場に信頼していただけるメーカーに。ハカリを使うことで効率が良くなること、まだまだ提案できることがたくさんある。工場というシステムの中の部品としてだけでなく、埋もれた市場をキチンとつかみ、仕組みとしても提案していく」と、昨年12月に就任した新潟県三条市福島新田丙の計量機メーカー、(株)田中衡機工業所の田中康之社長。

 田中社長の就任は昨年12月16日付で、福山匡前社長は顧問に就任した。

 福山顧問が体調を崩したため昨年4月から実質的な社長業務にあたってきたが、正式な就任から1カ月を振り返って「すべての決定、責任に対する重みを感じている。度量衡(どりょうこう)をやっている責任感、プライドを持って、お客様、市場に信頼していただけるメーカーに」と話す。

 同社は1903年の創業から107年目、「我々の製品は、信頼に支えられたハカリである」が不変の理念。製品の品質、メンテナンス、これまで築いてきた信頼関係が同社の強みでもある。

 田中社長は「それでも故障、クレームが年に数件ある。これを減らすことが目標の1つ。営業マンや技術者がお客様と打ち合わせしたが、深く打ち合わせしきれなかった、想定と違った使い方をされたために壊れてしまった、部品の不具合などが原因」だと品質管理体制を強化。品質保証課の人員を増やし、「製造のトップ」として経験豊富な前生産管理本部長を品質保証課の責任者に据えた。

 主力製品は、輸送トラックの重量を量るトラックスケール、製造現場などで利用されるフロアスケール。

 世界的経済危機で設備投資が減少したため、昨年は業界でも軒並み20〜25%減。それでも、製品の性質上、一時の自動車業界などに比べて落ち込みは緩やかで、1次産業分野では伸びもあった。

 「屋台骨」となる信頼性や、「何かあったらすぐに対応できる」メンテナンス性が重要なだけに「工業用の場合、安いものを海外から入れても、メンテナンスができなかったり、すぐ壊れてしまったりで、国内産に切り替える」ことさえあり、「トラックスケールやフロアスケールは大型のため、輸送費の面からも輸入は難しい」と言う。

 あらゆる工業製品のグローバル化が進む中で「世界市場に出ていくよりは、国内マーケットをどう守るか。中国、韓国、東南アジアのメーカーも国内マーケットを狙っている」とし、「計量機は継続してメンテナンスすることが非常に重要。工場のなかで常に動いているので、止まってしまうと数千万円、それ以上のロスが出てしまうことさえある。万一の場合、すぐに修理・対応できることが信頼であり、これが海外メーカーに簡単に真似できないこと」と、企業理念の「信頼」をさらに強化していく。

 さらに、激変の時代をチャンスとし「今までと違うルールでマーケットが動くなかで、タナカとして違うやり方で、どれだけ新しい発想を生み出すか」だと話す。

 この新しい発想について「計量器は1つのシステムでありながら、例えば工場など、もっと大きなシステムの中に組み込まれる1つの部品。それとは別に、ソリューション、仕組として提案していきたい」とする。オフィスビル、ショッピングセンターなどで排出される廃棄物の出所、種類、量、発生履歴を一括管理する廃棄物計量管理システム「eco CUBE」は、「ハカリを使った仕組み」として同社が提案しているシステム。環境省と「エコファーストの約束」を交わしているキリンビール本社でも利用されている。

 「ハカリがなければモノは作れず、流れない。地元のメーカーともいろいろなかたちでつながりながら、度量衡をやっている責任とプライド、世の中を支える自覚を持ってやっていきたい」と田中社長。システム化された計量機だけでなく、形を変えずに製造を続けている「台秤」など、あらゆる分野でハカリが活用されている。  
                                                (外山)