
LLC場所文化機構代表で、東京・丸の内の十勝レストラン「とかちの…」や、北海道帯広市の中心市街地にある屋台村などを手掛けたことで知られる「場所文化プランナー」後藤健市さんが、21日午後7時から、燕三条地場産センター・リサーチコアで開かれた燕三条ブランド推進セミナーで講演した。燕三条プライドプロジェクト主催。 (外山)
講演要旨は次の通り。
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ウルトラマンと7人の侍
これまでは、首長、政治家、役所、まちづくりのコンサルタントなどに依存し、誰かが豊かにしてくれることを待っていた。依存型だったという自覚を持つべきだ。いわばウルトラマン型。1人のスーパーヒーローが突然やってきて解決してくれる。住民は呼ぶだけ、感謝するだけ。
七人の侍型では、住民は自分たちの問題を解決する方法を自分で考え、侍を雇うことにする。そして自分たちで侍を説得し、自分たちも戦いに加わる。
自分たちで覚悟を決めて行動し、外の知恵や力をしなやかに、したたかに利用する。これは依存ではない。文句を言うことを止め現状を素直に受け止める。収入格差、地域格差は確かにある。日本の人口も確実に減少していく。
ただ、文句があるということは、ダメな部分に気が付いているという意味で実はいいこと。しかし、文句や論評、対立からは何も生まれない。
これからは、生き残りではなく再生。先達が築いてきた過去は、しっかりと受け止め、ありがたく使うが、今から自分たちが新しい時代を創造していくという意識を。ブランドに必要な物語とは生き様、具体的な行動から生まれる。
場所文化とは何か
文明は人の生活、社会を便利にする、文化は生活や社会を豊かにしていく。文化は古くなったり、少なくなることで価値が上昇する。
場所は、暮らす土地であり、景観、自然。文化は地域住民の生活の中で、生活そのものを豊かにし、生活の中で使い続けないと消滅してしまうもの、例えば方言、景観、料理、建物。方言でなければ伝わらない表現がある。その場所でないと感じられない、味わえないことを価値化することが場所文化。
文化のスタートは高尚なものではなく、もっと身近にある。50年、100年経ったときに文化的価値を持つものを、今、捨てている。
食べ物に旬があるように、場所にも旬がある。花見、紅葉狩り、月見、日本には古来より場所の旬を、食や酒を交えて楽しむ文化があった。この時期であれば、うちの地域が日本で1番美しいと、瞬間最大風速的な価値で自分たちを発信する。
場所コンプレックスとの対峙が地域を成長させる
コンプレレックスは劣等感。他人は気にしていないものであり、自分で価値を認めないからコンプレックスになる。他人との違いを素直に受け入れる、プラスにとらえると個性になる。住民が違いを素直に受け止めることが不可欠。
東京へのコンプレックスによって、地方の個性はどんどん失われている。しかし、本物を見る機会が増え、誰もが情報を手に入れられる時代、真似、東京風では本物になれない。
例えば十勝には、畑しかない。これを畑があると言った瞬間、魔法のように違いが個性となり、欠点が長所になる。地域のありのままを受け入れ、個性を生かす。
十勝にある、農作物、農地、農業機械、農作業のすべてが価値の対象となる。畑と言えば、農作物だけでなんとかしようとすることは、自分たちで価値を限定し、限界を作っている。
自分たち自身で価値を見出すことから、地域の自信回復が始まり、地域の誇りが創造される。
「豊かさ」は、高質な時間
豊かさとは何か、過ごす時間の質を高めるためにモノがある。質の高いモノを持つことで、何が変わるのか理解しないといけない。
祭りなどは「ハレの場」と言われる、高質な時間がハレ。ハレの場をつくるために地域のもったいない資源を使う。空きビル、空き店舗、山、川、畑を使い、地域の人がやる気を持って、外部の知恵やお金、人をしなやかに、したたかに使いこなす。
今、全国の中心街は「中心死骸地」となっている。 それでも祭りや花火大会など、人は楽しいことがあれば集まって来る。
祭りの呼び物の屋台(露店)には、買いたい物もないのに、にぎやかさを楽しむためにわざわざ行く。そして屋台の親父さんやお兄さん、お姉さんと会話を交わして、つまらないもの、おいしいくないものを買って喜んでいる。人はにぎやかさとコミュニケーションを求めて屋台にやってくる。
そこで屋台で中心市街地活性化しようと考えた。
屋台は仮設なのですぐ止められる、誰にでもできそう、そして楽しそうというのが1番重要だった。全国の屋台や歴史の調査、規制や法の壁を乗り越えていく作業があった。
19台、1台あたり月2万円で貸していた帯広市中心部の駐車場に「北の屋台」を開いて、年間18万人、3億円の売上となった。結果的に中心街に飲食店が増え、まちの価値が上がった。とりあえずやってみたら、良い結果となった。
空きビルの利用では、自分たちの意志で中心市街地に集まる場づくり、自分たちの時間、質の高い時間を過ごす場づくりとして、みんなで利用できるゲストルームを作った。中心市街地の価値を高めながら、ついでに買い物してもらう。
中心市街地は1度、物を売る、買うことを、良い意味であきらめてみたらどうか。大人がカッコよくまちで遊ぶ背中を子どもたちに見せる。カッコよく場所を使う。
農地景観を生かしたハレの場づくりでは、収穫を間近に控えた小麦畑の真ん中だけを刈り取って、ウッドデッキを設置し、ワインとチーズを楽しむ「小麦畑のフィールドカフェ」にした、この一時を楽しむためだけに、東京から人がやってきた。
ネガティブ要素満載の冬にしても、凛とした厳しい寒さがあり、真っ白な雪原がある。十勝の冬ならではの青空、星空があるととらえた。ビニールハウスを使った冬季限定レストランの「スノーフィールドカフェ」で青空と雪原を楽しんでもらう。
カーナビを利用しても着けないような場所で、都市部のレストランよりも高い価格設定とした。料理の値段ではなく、時間の質に対して価格を設定したが、ちゃんと人はやってきた。場所の旬、場所、時間の内容を絞り込み、そこで豊かに時間を過ごす設定があれば、わざわざ行く価値がある。重要なことは、食器には気を使うこと、でないと時間の質が高くならない。こういったケースでは紙皿や割り箸を使うこともあるが、これでは高質な時間とならない、ギャップがプラスに転じる。
地域の宝は新しく作るものではなく、身近な所にある。地域の本物を生かす。当り前をキチンとデザインして、質の高いものにする。何かを楽しむために人はわざわざ移動する。
TOKYOグローバル 東京ローカル
グローバルな面で見た時、東京は日本の4番であり、ピッチャー。応援すべきであり、使うべき。中国が猛烈な勢いで発展しているが、東京にはアジア、世界の中心としての役割を担ってもらわなければならない。
グローバルで勝負するところ、小さいまま勝負するところの2つがある。日本は多様な状況でそれがあり、だからこそ東京があった。東京が豊かであるのは日本全体が豊かだったから。人は居るが、東京は急速に貧しくなっている。
東京が地域を救うのではない、地域が日本を救い、東京を代表選手として、世界へ送り出す。日本はもともとそうだった。
外に向かってはTOKYOグローバル、内に向かっては東京ローカル。東京は自分たちの場所という認識。
「とかちの…」は地域の食材をただ持っていって提供するだけ、十勝では受けないが、東京では刺さる。飲食業のプロでさえ、東京で生き残るのは難しいが、中央から来た人を地元でもてなす時を考えてみてほしい。家庭に招いたり、川原でバーベキューしたりする。もてなす気持ちがあれば、人を迎えることはできる。本物、本気があればちゃんと伝わる。金もうけのモデルにはならないが、地域と中央を結ぶには十分。
みんな違ってみんないい
今までのまちづくりは小学生の野球やサッカーみたいだった。ピッチャーであり4番でありたいが、誰と戦うかが分からない。サッカーで言えば、役割分担もなく、ボールがあるところに群がってプレーするような状態。
優秀な人たちがいるのだから、この人たちのポジション・役割が決まれば、ボールを回すことができる。能力があるのにボールに群がっている。誰と戦っているのか、何のゲームをしているのかさえ気付いていないので、ルールも分かっていない。
考えているのにやらないのはもったいない、まちづくりも、ものづくりもセンスとバランスが需要。頭でっかちにならず、心と体のバランスが取れた地域づくり、国づくりが大切。
人との違いを個性ととらえ大切にする「みんな違って、みんないい」。
