水辺の昆虫は今
君は見つけることができるか?
 タガメ、大型のゲンゴロウ、タイコウチ、コオイムシ、ミズカマキリなど水辺の昆虫を見かける機会が少なくなった。ホタルと同様、農薬による水質汚染、河川改修、農地の圃場整備などが原因とされているが、ホタルに比べ世間の関心は薄い。そのため、1度も目にすることなく昆虫採集を卒業する子どもも少なくない。

 これら水辺の昆虫の生態と県央地域での生息状況、採集のポイントを、昆虫の専門家2人に聞いた。             
                                              (細山)

三条市東大崎1、自然観察員の岩崎武さん

 蝶の研究を専門的に行うほか、自然観察指導員として、水田調査や、小学校の総合学習で昆虫について説明するなど、多彩な活動をしている三条市東大崎1、岩崎武さんは、県央地域の水辺の昆虫の現状について、ゲンゴロウなど一部の種類を除いて、トンボのヤゴやカゲロウの幼虫なども含め、「子どもが取りに行って見つからないほど数が少ないわけではない」と話す。「それぞれ、水の流れや水底の状況、水草の有無など生育の条件が違う。昔からの多様性が残っている川では、さまざまな昆虫を見つけることができるし、五十嵐川の道心坂の河原などを探せば、いろいろなものが見つかる」。

 減少した理由については、「池などの減少。昔は競馬場のあたりなどにも池があり、トンボや水棲昆虫など多く住んでいた。そういった環境が埋め立てられたことが大きな原因」。

 岩崎さんは、7・13水害の影響も指摘。それまで、流れの速さや水の深さ、底の泥や砂利の違いなど多様性を持っていた川が、「水害後の整備のおかげで『すばらしい川』になってしまった」として、河川の画一的な整備によって生態系が単純化してしまったことを嘆く。また、農業の効率化に伴う水田の変化にも着目。近年の個体数減少は「稲の生育途中で一旦、水田の水を抜くことによる生態系へのダメージが大きいのではないか」とした。

 また、岩崎さんは水辺の生態系について言及。ゲンゴロウやタガメを、食物連鎖の頂点に置き「エサとなる小魚などがいなくなったのが最大の減少理由。水質など問題ではない。水はきれい過ぎてもいけない。プランクトンが発生するような状況でなければ、エサとなる小魚がすめなくなる」として、より広範囲による環境保護の重要性を訴える。見附市で取り組んでいるメダカの保護活動を挙げ、「メダカだけを増やしてもうまくいかない。エサとなるプランクトンは枯れた水草を好む。水草が育つためには、ある程度の日光が差し込むような環境がなければならない」と語っていた。 

胎内市・胎内昆虫の家、遠藤正浩館長

タガメ 胎内市にある昆虫の博物館、「胎内昆虫の家」の館長、遠藤正浩さんは、近年の水辺の昆虫の状況について、「かなり厳しい状態」と話す。「圃場整備や用水路の護岸工事などの影響が大きい。タガメについては、私が子どもの頃からいない。農薬の影響で真っ先に絶滅してしまった。もし、今、見つけたならば、それは真っ先にペット用の個体が逃げ出したものではないか、と疑うべきだ」とし、体長40ミリ前後のゲンゴロウについては、「県内では中越の山間部の池で確認できる。ゲンゴロウの仲間は生息環境の水質の変化には比較的強い生き物。しかし、茎の太い水草に卵を産むので、水草がなければ生息できない」。

 現在、同館にはゲンゴロウ、タガメなど貴重な昆虫が多く飼育されている。これらは、「動物園が貴重な動物を園同士で貸し借りするのと一緒で、貴重な昆虫は都合し合い、館内で繁殖を行っている」とのこと。しかし、ミズカマキリなどは比較的、周辺地域で容易に見つけることができるため、職員が捕まえている。

6351 現在、県内各地で水辺の環境保全の指標として、ホタルの繁殖事業が積極的に行われていることに対して、遠藤さんは、「タガメやゲンゴロウといった昆虫の繁殖も難しいことではないと思う。しかし、放流で一時的に数を増やしても恒常的にすまわせるためには、ホタル以上に広範囲での環境保全が必要になる」と話す。その理由に、1カ所の水辺で一生を終えるホタルと比較して、タガメやゲンゴロウをはじめ、多くの昆虫が、飛翔し、いくつかの水辺を転々とする生活を送ることを挙げる。「広い範囲で生活するからこそ、環境の変化を受けやすい。住める水辺が減少することで生息地が孤立化することが最も危険なこと」。

 また、ヒメゲンゴロウやマメゲンゴロウといった10ミリ以下の小型のゲンゴロウが、比較的多く見られることについて、「サイズが小さく、小さな生活環境で生きていけるため、生き延びているのではないか。近頃の子どもは、普通のゲンゴロウを見る機会がないため、これら小型のものを普通のゲンゴロウと勘違いしているようだ」と話していた。

新潟県レッドデータブックでは…

・タガメ―絶滅、1979年6月を最後に発見されず。

・タイコウチ―絶滅危惧種。

・コオイムシ―準絶滅危惧種

・ゲンゴロウ―準絶滅危惧種、しかし90年代以降、採取個体数は増加。復活傾向。

・コガタノゲンゴロウ―準絶滅危惧種

夏休みに水辺の昆虫を見つけるためには

遠藤さん―コオイムシやタイコウチは泥のあるような、流れのおだやかなところや池や沼を探してみてください。ミズカマキリはよく飛ぶ生き物なので、さまざまなところで見つけられます。タガメは新潟にはいませんが、西日本では比較的生きのびていると聞いています。逆にゲンゴロウの減少の方が深刻だとか。

岩崎さん―産卵する水草があることが重要。水質は問題ではなく、むしろ湧水が出るようなきれいな池では住みにくいでしょう。また多くが肉食性なので、十分なエサとなる小魚やオタマジャクシがいることも条件。護岸されていない水辺であることも大事です。小さなゲンゴロウやミズカマキリは、山の方の学校のプールなどでも見つかることがあります。

・水辺の昆虫は空を飛べるので、意外なところで見つかる可能性もある。しかし、どれも貴重な生き物なので、観察が終わったら逃がしてあげよう!

・タイコウチやゲンゴロウが住む池や用水路は大切な自然環境。見つけたら学校の先生に教えてあげよう!
 2010年07月22日夏季特集号掲載