2009年3月に新潟県三条市が制定した「三条市食育の推進と農業の振興に関する条例」に基づき、「地産地消」をキーワードに掲げ市民と行政が一体となって「食と農の連携協議会」として立ち上げた三条まんま塾(川瀬弓子会長)は、25日午後7時から三条東公民館で「食と農で元気アップ講座」を開催した。
3回目となる今回は新潟大学大学院教授で、免疫学・医動物学の分野で活躍している安保徹さんを講師に招き、「食事を変えると体が変わる」をテーマに講演。自律神経と食、昨今の生活様式の変化や子どもの変化などの大きなテーマを分かりやすく解説。雪が降りしきる天候だったが約200人の市民が駆けつけ、安保さんの素朴なユーモアあふれる語り口に耳を傾けていた。
はじめに川瀬会長があいさつ。「安保先生からは心が豊かになり元気が出るお話を聞かせていただける。十分に聞いて元気になってほしい」と参加者に呼びかけた。
なお、講演要旨は次の通り。
・食と自律神経の関わり

自律神経には、交感神経と副交感神経があり、食べることや睡眠をとることなどは副交感神経が支配する部分。リラックスした状態を司る副交感神経が、消化から排せつまでを支配している。だから、人間はごちそうを食べるとゆったりした気持ちになる。逆に怒るのは交感神経が関わる。頭にきている人でも、満腹になれば許してくれるのはそういった仕組み。この交感神経と副交感神経のバランスが保たれていればいつでも健康でいられる。しかし、バランスが崩れると体を壊してしまう。
今、1番、体を壊しやすいのは、忙しさや長時間の労働によるもの。1日の長い時間を交感神経が活発に働き緊張状態でいることで、脈拍が早く、血圧が高い状態になり、病気になりやすい流れになる。だから、働きすぎは危険だ、という感覚を持っていないといけない。また、心配や不安も交感神経に関わる。人間関係の不安などで悩むと緊張するのだから。これは多くの病気に関わるもので、例えば、交感神経の緊張によるものの1つに糖尿病がある。だいたい、病気の7割が交感神経に関わる。
しかし、お年寄りや子どもの場合、それだけでは説明できない、無気力や寝たきりといった病気が最近は多く見られる。これらは副交感神経が活発になることにより起こっている。お腹が減れば交感神経が働き、満腹になれば副交感神経が働く。今は食べ物がたくさんあり、しかも外出する時間が少ない。お年寄りの場合、サラリーマン時代はモーレツ社員だったが、退職して急に楽な生活になり散歩にもいかなくなるのは副交感神経によるもの。リラックスもいき過ぎると身体機能が低下する。そして筋肉や骨格が鍛えられなくなる。とくに子どもの場合、授業を受けても疲れやすく勉強できないようなこともある。さらに大事なのは、困難を跳ね返す力といったものも交感神経の働きによるものだということ。優しさのいき過ぎが気弱さや無気力を生む。お年寄りの場合、女性はまだいい。家事などで体を動かす機会があるから。しかし男性はダメ。80歳を乗り切れない。やはり子どもからお年寄りまで、楽のし過ぎも危険だと考えないといけない。

だからといって食べることを急にやめさせることはできない。どういう人が食べすぎで太るのか。だいたいストレスがある人が太っている。ストレスを食べることで解消し、バランスを保っているケースが多い。食べることをすぐにやめさせることは危険だ。だから、そういう人は悩みがあることを自覚し、周りの人も理解した上で悩みの要因を減らす。悩みがなくなればガツガツ食べる必要もなくなる。
また自律神経は白血球、すなわち生体防衛・免疫にも連動している。白血球には、細菌を処理する顆粒(かりゅう)球と免疫を司るリンパ球がある。顆粒球はアドレナリン受容体を持っていて交感神経の刺激で数や働きが活発になり、リンパ球は消化器管の周辺で進化したものなので副交感神経の支配に入っている。それぞれ異なる働きで効率よくうまく機能していたものが崩れると急に病気になる。
ストレスで交感神経が活発になると胃潰瘍や食道炎、子どもではクローン病、それに痔などの組織障害の病気や、対になる免疫機能の低下による常在菌による歯槽膿漏などの病気になりやすくなる。それ以外では、突発性難聴やメニエール病を発症する場合もある。
逆に、今、都会の子どもの3人に1人がアトピー性皮膚炎や気管支ぜんそくを患っている。ステロイド剤などの対症療法で解決するものではない。根本から解決しなければいけない。
食べ物で病気は変わるということを知ってもらいたい。アトピーの子どもの多くに私は食生活の偏りを感じる。とくに甘いものを好む傾向が強い。甘いものは副交感神経への刺激が強い。それによってリンパ球が増大しアトピーの原因となっている。だから子どもが甘いものを食べすぎていないか気を付ける必要がある。甘いものを遮断すればリンパ球は減らせる。
・解糖系とミトコンドリアと食生活
もともと私たちの体は20億年前に2つの生物の合体で生まれたものだ。6炭糖であるブドウ糖を分解し、エネルギーを取り出し、乳酸を作る解糖系サイクルで酸素のないところで生きてきた。そこに酸素を使って大きなエネルギーを生み出すミトコンドリアの先祖が寄生することで我々真核生物が誕生した。ミトコンドリアが生み出す大量のエネルギーによって多細胞生物が誕生した。逆にミトコンドリアを取り込めなかった生物は今も単細胞のアメーバなど細胞分裂を繰り返す生物で不老不死の世界。
実は我々の体にもその名残がある。ミトコンドリアの多い細胞は赤い色をしており細胞分裂をしにくい。多いのは赤筋とよばれ心臓などに使われている。逆に白い細胞は皮膚や爪などに使われており細胞分裂が活発。働きとして、解糖系は瞬発力を司り、ミトコンドリアは持久力を司る。
このエネルギー系の割合が、子どもと大人、お年寄りでは微妙に異なる。子どもでは解糖系が有利。大人の場合は1対1、お年寄りは解糖系が縮小しミトコンドリア中心で生きる。それぞれの特徴で食べ物の食べ方も分かる。
子どもはとにかく糖分をたくさん取らないといけない。3食では足りずおやつで補給する。それと細胞分裂が活発、つまり成長するということ。そして子どもは瞬発力が高く機敏に動く反面、持久力に乏しく飽きやすい。大人になると調和の時代。ミトコンドリアが加わり3食でよくなる。お年寄りは解糖系が縮小し、瞬発力が衰えるが持久力は残る。しかしエネルギー効率は良いので小食が健康維持の条件になる。
だから、子どもとお年寄りが同じ食事ではいけない。
また、食べ方で分かることはほかにもある。調和の時代にガツガツ食べれば太る。働き盛りで太っている人は決断が早く部下や自分に厳しいという良い面も出てくる。また食が細いと悟ったような感じの人になる。そういうメリットもある。
食べ方を理解するときにこうしたエネルギー生成系も理解しておくと奥が深くなる。
(細山)
