損得よりも善悪を先に考える、身の丈に合った商売を
フルーツアーティスト 杉山清さん語る
 加茂商工会議所は、5日午後1時30分から、加茂商工会議所会議室で、講師に静岡県富士市にある杉山フルーツショップ代表の杉山清さんを迎え、産業活性化セミナーを開催。参加した30人は「景気・不景気は経営者次第!〜八百屋の端くれ、杉山清の経営哲学〜」をテーマに講演を聞いた。

 杉山さんは1960年、栃木県生まれで、富士市の吉原商店街にある杉山フルーツショップの3代目。2005年に完熟フルーツを使った「フルーツソムリエ、清がつくる果物屋さんの生ゼリー」を開発。これが大きな反響を呼び、連日午前中で売り切れ、各地の百貨店でも引っ張りだこの大人気商品となった。全日本ギフト協会公認「ギフトラッピングコーディネーター」日本ベジタブル&フルーツマイスター協会「ジュニアベジタブル&フルーツマイスター」の有資格者で、最近では、フルーツコーディネーターの傍らテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、業界紙などの取材や、全国から店舗視察などが相次ぐ。講師としても大学や各種団体、カルチャースクールなどでも活躍している。

 杉山さんは、自身の経営理念や経営戦略について、ユーモアを交えながら講演した。

 生フルーツゼリーは決して安いものではない。それなのに全国からお客さんがやってきて毎日完売するという状態を「これはミラクル。こんなこと全く想像していなかった。しかし、明日のことは分からない。人気のある商品が次々と生まれては、消えていく。私は一過性で終わりたくない。持続させること、『細く長く』が私のビジョン。とにかくお客さんが満足して、喜んでくれることを第一に、身の丈に合った商売を心掛け、息の長いものを作り続けていきたい」として、自身の経営理念を「損得よりも善悪」と語った。

 絶大な人気が続く生フルーツゼリーに目を付け、杉山さんには、いくつもの大手スーパーマーケットやメーカーからライセンス生産の話が持ち込まれる。有名百貨店やデパート、話題の観光スポットなどからの出店要請も後を絶たない。「もちろん規模を大きくすれば売り上げは上がるだろうし、宣伝にもなる。しかしそれも、もって2年の話。私は損得よりも先に善悪を考える。もうかるか、もうからないかではなく、身の丈に合った商売をする。スケールメリットからスモールメリットへ」と述べた。

 商店街の衰退について「昔は、商店街でしか物が買えなかったから、商店街に価値があった。しかし、今は違う。店が増えたことによって、商店街は選択肢から外されている。お客さんが選択する時代、店が選択される時代に変わった」と分析した上で、「それでも、お客さんは欲しいものがあれば行く。今の商店街には欲しいものがない。経営者はこれを肝に銘じる必要がある」と語った。

 加茂市がマカロニの発祥の地であることについて触れ、「すぐに芽は出ない。しかし、何がきっかけでチャンスが来るか分からない。私も生フルーツゼリーを始める時、みんなに『1週間ももたないだろう』とバカにされた。それが悔しくて、まず1週間、それから10日、と目標を決めて続けていったら、今のようになった。だから皆さんもきっとできる」として、挑戦すること、持続することの大切さを訴えた。

 また、売れない理由を外的要因にしないとして「政治が関係あるのか?総理大臣が変われば売り上げが上がるのか?それは全く関係のないこと。売れない理由を人のせいにしない。人のせいにしていては、何も解決しない。どうすれば売れるか、お客さんに喜んでもらえるかを考えて動けば、景気になんて左右されない。アスリートは誰のせいにもしない。記録が悪かったら自分の努力が足りないということ。経営者も同じ。アスリートは体を使うが、経営者は頭を使う。どうやったら売れるか、それを考えるのが仕事」とした上で、「『100年に1度の不況』と言われているが、これは誰が決めたのか。暗示にかかっているだけ。自分自身で『不景気だからしかたない、だめなんだ』という暗示をかけてはいけない。そんなことをしていては溝に深まるだけ。『できる、絶対にできる』という暗示をかける」と語った。

 商売を屏風に例え、「屏風は広げ過ぎると倒れる。商売も一緒。広げ過ぎると失敗する。身の丈に合っていないとうまくいかない。利益よりもクオリティー。先にもうけようとしては進まない。地域の人に喜んでもらう、まずはそこから始める」と語り、店舗拡大や売り上げ重視の経営では限界があるとした。

 「私はよく勝ち組ですねとか、そんな風に声をかけられることがあるが、人生と商売に勝ち負けはないと思っている。どこで勝ちなの?売り上げが良いから?テレビや雑誌に取材されるから?私は勝ち組ではなく『価値組』だと思っている。差別化という言葉が好きではないので独自性という表現をする。『こだわり』とは、他人に共鳴されて初めて、こだわりと言える。共鳴されなかったらただの独りよがり。付加価値を付けること。ファンをつくることが大切」と述べた。

 杉山さんは最後に「売り上げを上げるのは単なる一手段。いかに多くの人を満足させるかが重要。私は毎日のように息子やスタッフにも言っている。今が当たり前だと思うな。一過性の売り上げはいらない。人は飽きるものだから、飽きられない魂を込めたものづくりして、長く続けられる商売を目指せ。人よりほんの少しの苦労、努力で大きく変わってくる。できない理由を考えるより、できる理由を考えよう。デメリットのあるところこそ、ビジネスチャンスはある。皆さんにもチャンスはたくさんある。知恵とアイデアを持った人になってほしい」と締めくくった。
                                               (間)
 2012年03月09日本紙掲載
加茂商議所 産業活性化セミナ−