火災が放射能を拡散させたチェルノブイリ事故
環境ジャーナリスト山本節子さん「がれき焼却を続けると何が起きるのか」
 新潟県三条市では、12日から震災がれきの本焼却が始まり、3月25日まで続けられる予定だが、「がれき焼却を続けると何が起きるのか」をテーマに、環境ジャーナリストで地方行政にも詳しい山本節子さんから話を聞く講演会が、20日午後七時から、三条東公民館で開かれ、100人ほどが参加した。

 山本さんは、ウクライナ・チェルノブイリ原発事故後に起きた森林火災や農地火災により、放射能が拡散しているとの論文などを示しながら、「チェルノブイリの経験で分かったことは、森林火災によって放射能は定期的に拡散している。日本の場合は意図的に、それを焼却炉というもっと危険なPM(微粒子)が発生する装置で拡散している」と警鐘を鳴らした。

 講演は、震災がれきの焼却について勉強会を開催するなど、さまざまな活動を行っている未来の生活を考える会・三条(伊藤得三代表)が主催したもの。開会のあいさつで、伊藤代表は「タバコでも、ゴミでも燃やすことに絶対にいいことはない。三条では毎日のように煙突から白いガスが高く舞い上がり、弥彦から風がやってくると、鱈田、金子、吉野屋、長嶺の方に流れる。下で暮らしている何の罪も無い我々が呼吸すると吸い込み危ない。燃やすことは決していいことではない。燃やし続けるとどうなるか。フィルターは役立たない」と述べ、これから市民が取るべき行動をきょうの講演を聞いて考えてほしいと呼び掛けた。

 その後、山本さんの講演が1時間30分ほど行われ、終了後には参加者との質疑が行われた。

 震災がれきの焼却について、泉田裕彦新潟県知事と國定勇人三条市長の間で見解が分かれている理由について聞かれると、山本さんは「泉田知事が反対しているのは、県知事として有害廃棄物に、廃棄物処理法に基づいて有害性にものを言う権利がある。一方、三条市長は、がれきは一般廃棄物と言っているが、『がれきは一般廃棄物だからオレがやる』ということ。一般廃棄物の処理は市町村に任された自治事務」と、それぞれの立場から意見が食い違っていることを説明。

 その上で、「自治事務というのはゴミの処理がそうだが、基本的にその町から出たゴミしかダメだった。ただし、隣町と一緒になって相談して、特定の協定を結ぶことは可能で自治法上も認められている。ところが、今回のがれきは離れたところから持ってきて、それに汚染があるということで地方自治法に違反している」と話した。
                                             (石山)

 講演要旨は次の通り。

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 私はいろんなことを発言する時、必ず出典を明らかにする。その出典を誰が見ても必ず後づけられるものばかり。裏情報は使わない。そうして公然とものを言わないと、反撃があった時に言い返せない。というわけで、きょうの出典は2つ、2009年に出た学術論文「チェルノブイリ立入禁止区域における、森林火災、煙の排出と放射性物質の拡散」と、その論文を元に追いかけて取材した去年7月のBBCニュース。

 論文の結論とは、チェルノブイリの放射能汚染は森林火災によって広がった。ひるがえって日本ではどうか。がれきの広域処理は焼却炉という特殊な施設を使うために、森林火災よりももっと広範で、もっと大きな汚染を周辺にまき散らす。

 チェルノブイリはどういう所かと言うと、ほとんどが針葉樹林地帯で70%、あと30%は農業地帯。立入禁止区域は約2600平方キロメートル。それに対して、福島県の立入禁止区域は1600平方キロメートル。今でも、相当数の人が福島県に閉じ込められている。その人たちは行き場がないからそこにいる。それを判断したのは3・11の直後。がれきの広域処理はというと2011年の4月の始めころ。事故から2カ月も経たないうちにがれきは外に出す、人間は出さないと決めてしまった。

 チェルノブイリで1995年に大火災が発生した。この火災の煙の中に何があったのか。調査の結果、PMが放射能を含んでいることが分かった。そのPMに含まれる放射性物質はプルトニウムだった。政府は福島原発で1番の問題はセシウムと言っているが、新潟県知事はストロンチウムも出ていると指摘している。政府はプルトニウムが出ても少しだと言っているが、チェルノブイリの結果ではプルトニウムが1番多かったという結果になっている。

 森林火災で発生したPMにはいろんな核種が入っていることが分かった。最大の核種はプルトニウム。結局、PMを含む煙にさらされると、そこに住む住人、煙の進行方向に当たった住人は内部被ばくのリスクに常にさらされることになる。そして、煙は何千キロメートルも旅をする。

 論文の結論は、事故で周辺の地域は大きな被害を受けた。ところが、即時的な被害だけでなく、何年も経ってから起きる火災でダメージが増幅されていることが分かった。長期にわたる環境影響は否定できない。福島でもどこでも、森林や放射能を受けた草地や農地は、そのまま放っておけば悪さはしない。しかし、手を入れて除染したり、あちこちに動かして、持っていった先で高温処理をするとどうなるか。はっきりと放射能の拡散に手を貸していると言わざるを得ない。それが、論文が教えてくれていること。

 チェルノブイリの森林火災で放射能が拡散することは分かった。では、がれき処理でどうなるのかを考える前に、ごみ焼却について、何が起こっているかを知らなければいけない。

 焼却というのを化学的に言うと酸化作用。酸化して高温で物質を破壊する。ただ、物質は破壊されても、物質を構成する元素は消えない。今のほとんどは高温焼却炉。焼却炉の中では、連続的に化学反応が起きている。毎日、いろんなゴミを出すが、例えば紙にも、漂白剤で塩素が含まれているし、インクにも化学物質が使われている。それを定着させるための化学物質がある。それを一緒くたに入れると私たちには分からない化学反応が起きている。それも毎時毎時、焼却炉の中の温度は一定ではない。その化学反応で、多数の有毒物質が発生しているのも明らかで、解明されているのはごく一部。1番問題なのは有毒物質が灰になって終わりに見えるが、実際は無くならず、微小化して人間の体に入りやすくなるということ。また、灰も2種類あって焼却灰と、ふわふわと煙突に逃げていこうとする灰がある。それを飛灰というが、毒性は焼却灰の何十倍もある。放射能も焼却灰ではなく、飛灰に多く含まれる。この飛灰の処理には多額の費用がかかる。そこで、政府が命令を出したのがゴミ処理広域化計画。

 PRTR法という法律があるが、企業が人の健康や生態系に有害な化学物質について、排出していたり、廃棄物に出ていることが分かる時は、企業が把握した上で、しかるべきところに報告しなさいというもの。これが怖いのは、すでに462の物質が有害で環境中に多量に存在していると認められている。さらに、462の物質の中で15物質が発がん性があるとされている。それが特定第一種指定化学物質だが、例えばベンゼン、トルエン、ダイオキシン類、トリクロロエチレン、スミチオンなどの農薬、有害重金属の金属化合物。農薬以外は焼却炉から出ているのははっきりしている。特にダイオキシンは99%が焼却炉の中で生まれる物質。

 ごみ焼却施設はクリーンセンターという名前をつけているところも多いが、このPRTR法の対象事業。有害な物質を出すことを認定されている施設。焼却炉から出ているのは、ダイオキシン類、酸性ガス、PM、ベンゼンなどの揮発性有機化合物、そして温室ガス。いろんな有害物質が出ている、放っておいても。それをがれき焼却で、1ベクレルでも放射性を帯びることを許してはいけない。

 がれきというのは言ってみれば放射性廃棄物。2011年8月31日までは、1ベクレルでも焼却炉で燃やすことはダメだった。それが、妙な法律を作って、廃棄物処理法を読み替えさせられて、今は燃やしてもいいとなっているが、法律的に言うと壮大なごまかし。放射性PMを吸い込むと体内から被ばくを続ける。

 こういうと、三条の市長も言っていると思うが、「私たちの生活も放射能に囲まれている」、「飛行機に乗っても放射能は浴びる」と。間違えてはいけないのは、自然放射線とメルトダウン、核爆発でできた人工の放射性物質は全然違うもの。欧米では常識以前の話だが、それを延々とやっているのが今の行政。人工放射性物質は危険性が高く悪質。そして、有害重金属、ダイオキシン類、揮発性有機化合物も全部、放射性を帯びてしまう。

 そして、実はがれきには大量の農薬が使われている。震災の時に疫病を予防するために大量の次亜鉛素系の消毒薬を噴霧した。その消毒薬と反応して非常に危ない農薬がその次に使われた。がれきは最初から広域処理するつもりだったので、長い間置いておいた。そうするとハエが大発生してしまった。当然ながら防虫剤。次はにおい、腐って臭いので、その次に使ったのが消臭剤や芳香剤、両方とも農薬が入っている。最後は、防腐剤が使われた。チップにしたものは、そのまま置いておくと、雨が当たって日に照らされて、短い間に土になってしまう。それを持たせるために、おそらく防腐剤が使われている。だから、途中からがれきの色が昔は木の色だったのに黒くなったとみんな言っている。

 がれきの焼却処理を「きずな」、「お互い様」と言う人がいるが、そんなことはない。中越地震で出たがれきと今回のがれきはまったく違うもの。それを分かっておかないと、自分の住む地域を壊滅的な被害に遭わせてしまう。量が減ったからいいじゃないかと言う人もいるかもしれないが、そうじゃない。環境省には長期的な目的がある。新潟県で言うと、柏崎の原発が廃炉になった時に、膨大な放射性廃棄物が生まれる。それをどこで処理するかも決まっていない。そこで、今のうちから何とかしてつばをつけておかなければいけない。1度、引き受けてしまったら、そのルートができてしまう。

 また、焼却炉自体も危険なもの。医師も、焼却炉の健康リスクは無視できないと言っている。前から言われていたことだが、さらに危険なことが分かってきた。焼却の代替案もある。例えばクリーン生産、生産する時からゴミになった時のことを考えて生産する。環境を汚さない素材を使う。排出者責任や汚染者責任も問わなければいけない。焼却処理も段階的に規制をかけ、禁止していかなければいけない。出口で規制しようとしているだけではダメ。生産の時点で規制をかけないといけない。こういうと、市場経済が1番だと思っている人は反対するが、そんなことを言っていられる時代ではない。

 きょう三条市の人が言いました。「試験焼却や本焼却の前から、すでに放射線量が出ています」と。なら、その時点でゴミを燃やすこと自体が危険じゃないのか。3・11の後は、ゴミの焼却を続けてもいいのか、真剣に考えないといけない。

 チェルノブイリの経験で分かったことは、森林火災によって放射能は定期的に拡散している。日本の場合は意図的に、それを焼却炉というもっと危険なPMが発生する装置で拡散している。これだけは覚えて帰ってほしい。

 2013年02月22日本紙掲載