歩くことで、価値作られるか
ドイツの地方都市はなぜ元気なのか、高松平藏さん
 自然と歩き、健康で元気よく暮らせるまちづくりを、ドイツ・バイエルン州の10万都市エアランゲン市に学ぼうという講演会「ドイツの地方都市はなぜ元気なのか」が、8月29日午後6時30分から三条市役所で開かれた。同市在住のジャーナリスト・高松平藏さんを講師に、人口が新潟県三条市と同規模のエアランゲン市の「歩行者ゾーン」、「オープンドア・イベント」、「NPO」を取り上げた。

 「可処分時間をいかに作られるか」では、地場産業が盛んで職場と居住地が近い三条市は「ポテンシャルが高い」と高松さん。エアランゲン市の事例を紹介しながら、「文化はおまけみたいに思われるが、まちのかたちを作る上で大切。メーンにもっていった方がよい」、「日本は具体的でないとダメだという傾向が強いが、言葉で、抽象的概念でどうイメージをつくるか」などと示唆に富んでいた。

 主催者代表としてあいさつした國定勇人市長は「高齢化を悲観的にとらえることなく、楽しく毎日を過ごし、結果的に長寿で健康でいられるスマートウエルネス三条に取り組んで3年。初めからゴールイメージを持っていた訳ではないが、視覚的なゴールイメージをと、先進的事例を調べて辿りついたのがドイツの中小都市の取り組みだった。三条市と同じ10万都市、エアランゲンにできて、我々三条市にできないことはない」と講演を通じて、スマートウエルネスのイメージを作ってほしいと呼び掛けていた。

 エアランゲン市は、小ぶりな都市の多いドイツ国内では大規模都市で、医療都市として発展し、文化や環境問題でも活発な動きがあると高松さん。個人GDPもドイツの平均を上回る裕福な都市という。

 市街地に全長約550メートルの歩行者ゾーンがあり、「日本でショッピングモールに遊びに行くような感覚」でまちに繰り出す人が多い。企業や農家、官公庁などが一般市民に門戸を開いて行うオープンイベントも行われている。

 もともとは日本のように市街地の中心に駐車場を設け、自動車が走っていた道路を歩行者ゾーンとした。高松さんによると、1970年代から議論が始まり、テストケースを経て、1987年に前市長が提示した「政治決定」だった。商店主からは「自動車が来なくては売上が減るという懸念もあったが逆だった。午前11時までは搬入搬出の自動車は入ってよいことになっている。もっと歩行者ゾーンを増やそうという議論が続いている」という。

 郊外型の大型店も周囲にあるが、歩行者ゾーン平日、休日ともにぎわい、ドイツの法律で日曜日に店を開けられず買物ができないため、春と秋のまつりに、特別に店を開けるとさらににぎわうなど「歩行者ゾーンとイベントがリンクしている」。

 オープンドア・イベントは、企業、消防署、病院、農家など業種を問わず開かれ、対面式コミュニケーション、マーケティング、情報開示、教育などの価値が認められている。地域資源の可視化が目的というオープンドア・イベント「科学の夜長」には400以上の企業、団体、大学などが門戸を開け、2万8000人が来場。うち70%がリピーター。

 まちの概念など、日本との違いが多く「会社や学校が唯一の世界になりがち」な日本に対して、ドイツはNPOが根付き、1人ひとりの世界観、価値観、コミュニケーションを多様化するばかりか、さまざまなイベントの実行部隊にもなっている。

 高松さんは「歩行者ゾーンといってもただの道。そこを歩くことで、どういう価値を作ることができるか」と話して講演を閉じた。

 質疑では、市街地まで出掛ける手段について質問があり、高松さんは「地下に駐車場が設けてある。パークアンドライドは重要」と答えていた。   
                                               (外山)
 2013年09月02日本紙掲載