2年越しの熱意実り、鍛冶道場で受入式
新規鍛冶人材育成事業に初の女性、安中淳子さん
 新潟県三条市から委託を受けて越後三条鍛冶集団(細川敬会長)が行っている新規鍛冶人材育成事業に初めて女性研修生が参加した。10月2日午前9時から三条鍛冶道場(長谷川晴生館長)で受入式が行われ、五泉市出身の安中淳子さんが、「前向きに何事にも挑戦していきたいと思います」と抱負を語った。

 安中さんは、1984年生まれの34歳。前職は新潟市の印刷業者で製品の梱包などを行っていたが、テレビで見た鍛冶職人を取り上げた番組で鍛冶に興味を持ち、鍛冶道場で行われているペーパーナイフや切り出し小刀の製作体験に参加し、さらに鍛冶の魅力にひきこまれた。直接、鍛冶道場に「鍛冶屋になりたい」と伝え、昨年、事業に申し込んだが不合格。その後も鍛冶職人への思いは募るばかりで、長谷川館長に「あきらめきれない」と手紙を送ったこともあるという。そして、再び研修事業に応募して2年越しで合格を手にした。

 受入式で安中さんは、「去年、今年と研修生に応募して2度目で採用になったわけですが、受かりたい気持ちの一方で、正直、だめなんだろうなとも思っていたので、今、この場にいるということが信じられない気持ちでいっぱいです」と喜びと不安の気持ちを素直に表現し、「これから職人として、長い道のりを歩んでいくことになるわけですが、あまり先のことばかりを見据えてつまずいたり、不安になったりしないように、とりあえずは、目の前にある課題を1つひとつクリアしていきたいと思っています」と話した。

 新規鍛冶人材育成事業は、三条の基礎技術を残していこうと7年前に始まった事業。安中さんを含め、これまでに県内だけでなく、北海道、大阪府、鹿児島県、埼玉県から7人が事業に参加しており、研修生の第1期生でもある眞崎直樹さんは、事業終了後に眞崎刃物鍛錬所として独立。ほかにも、池田鑿製作所で継承に向けて修業を重ねる竹村和徳さんもいる。現在は、安中さんを含め、3人が研修を受けている。

 研修では、まず3カ月間、安中さんは12月末まで、午前中は鍛冶道場で鍛冶集団の伝統工芸士から鍛冶の基礎を学び、午後は、鍛冶集団に所属する27企業を見学。来年1月からは、適性を見極めた上で、1つの事業所が受入先となって、その事業所で働くことになる。この間の給与、居住費、交通費は三条鍛冶集団から支給され、鍛冶道場での研修期間を含めて5年間受けられる。

 受入式には、鍛冶集団の師範らも駆け付けた。細川会長は、「きょうから研修が始まりますけれども、焦ることなく、体に十分注意して、しっかりと技術を身につけてください。そして、将来できましたら三条を代表する鍛冶屋に成長してください」と安中さんを歓迎し、雇入通知書を交付した。

 指導する伝統工芸士を代表して小林由夫さんは、安中さんに「ここ(鍛冶道場)で(研修を)やったから、鎌ができる、包丁ができる、鉈ができるというわけではありません。ですが、それを作ることに大事なことです。その応用が製品になります」などと、まずは研修期間に鍛冶道場で学ぶ鍛冶の基礎が重要だと説いて、受入式終了後、さっそく指導に当たった。                                       (石山)



 2018年10月04日本紙掲載