新潟モデル実現に県央企業への期待も
スペイン発小型電気自動車「Hiriko」
 スペインですでに導入されている小型電気自動車「Hiriko」を輸入し、日本の規格にあてはめ公道を走らせ、最終的には国内で部品を調達し、新潟モデルのHirikoを製作して世界市場への進出、地域の活性化に役立てようという取り組みが県内で行われている。

 Hirikoの独占導入契約を結んでいる(株)フォー・リンク・システムズが新潟県の協力を得て進めている事業で、県が出資する公的キャピタル、新潟ベンチャーキャピタル(株)も投資しており、新潟ベンチャーキャピタルのアドバイザーで、元三条信用金庫常務理事の佐川正博さんは、「部品を調達する際には県央地域の技術は欠かせない。国産のHirikoを作る際はもちろんだが、その前からも、県央地域の企業に参画してほしい」と話す。

 また、Hirikoには地域活性化への期待も大きく、「まちづくりのためにHirikoを活用したいという広がりを期待したい」と佐川さん。Hirikoをキーにすることで、従来の発想にはない、新たなまちづくりの形も見えてきそうだ。

 佐川さんがアドバイザーを務める新潟ベンチャーキャピタルは、平成22年に設立された公的キャピタル。早稲田大学工学博士で「光磁気記録媒体の発明」で(社)発明協会の内閣総理大臣賞を受賞した、田中冨士雄氏が社長を務める。

 県央地域との関連も深く、取締役に(株)マルト長谷川工作所の長谷川直会長が就いており、株主には(株)コメリ、(株)コロナ、ツインバード工業(株)などの企業が名を連ねている。

 ベンチャー企業への投資やインキュベーション、経営コンサルティング、ビジネスマッチング事業、起業家育成事業などを手掛ける。胎内市、新発田市、五泉市、新潟市でのベビーリーフ栽培事業、胎内市、五泉市でのマイクロミニピッグ養豚事業など、県内への新規事業の誘致にも取り組んでおり、Hirikoの超小型モビリティ(電気自動車)の導入もその1つ。

 スペインで走っているHirikoは、2人乗りで全長2・5メートル、全幅1・7メートル、全高1・3メートル、航続距離は約120キロメートル、移動速度は市街地で時速50キロメートル、最高90キロメートル。現地での販売価格はバッテリー別で1万2000ユーロとなっている。

 バスク地方の自動車産業協会とマサチューセッツ工科大学、研究開発会社が主体となった共同プロジェクトにより誕生し、日本ではフォー・リンク・システムズが導入契約を結び、新潟県と共同で推進委員会やワーキンググループを立ち上げ、導入、新潟モデルのHirikoの生産に向けた検討を進めている。

 当面は、スペインから部品を輸入し、日本で組み立てる「ノックダウン方式」で生産し、販売するという形になり、組み立ては、フォー・リンク・システムズが柏崎市に設立した子会社、(株)Hiriko JPで行う。まだ工場は稼働していないが、早急に建設に着手し、早ければ来年からの本格稼働を目指す。

 工場の稼働に先駆けて、今秋には試験的に導入予定。ただ、Hirikoの導入に大きな障壁となるのが、公道を走らせるための規格の問題だが、すでに調整は進めており、新潟市中心部を特区として検証する計画も持ち上がっている。

 市場は、まずは大型ショッピングセンターや商店街でのカーシェアリングなど弾力的な活用を検討している。「東京や大阪のような首都圏も当然、大きな市場となるが、高齢化の進む地域での需要も大きいのではないか。ニッチな市場なので、商売にするには国内だけではダメ。国外にも目を向けていかなければいけない。すでにフランスやイタリアにニーズがあるといい、日本から輸出ができるようになれば」と、最終的には海外市場も視野に入れている。

 今秋の導入後、柏崎市の工場稼働を待って、ノックダウン生産によりHirikoを組み立てる。さらにそれを解体し、1つひとつの部品まで研究し、県内での製造の可能性を探る。公道での走行実験を並行させ、新潟で走らせるために不可欠な降雪時の対応なども踏まえて、新潟モデルのHirikoの完成には、七年から九年後と見ている。

 来年にも稼働する工場では、ノックダウン生産により、年間200台から300台程度のHirikoが生産される見込みだが、商売として成り立たせるためにも、最終的には2000台程度の生産を目指したいといい、そのためには、多くの協力企業の参加が不可欠。また、部品を製造する企業を探す必要があり、「柏崎だけでは対応ができなくなる。燕三条地域の技術力は高い。ぜひ今からでも参画してほしい」と、県央地域の企業の参加を期待する。

 「本当なら、ノックダウン生産のところから入ってほしいところだが、そうでなくとも、生産開始の時点では、ぜひ多くの企業に参画してほしい。すでに、県央地域からもワーキンググループに入ってくれている企業もある。しかし、県央地域の企業者は慎重で、どちらかというと、まだ食いつきは弱い。当然、需要の見通しが立っていない中でリスクを感じると思う。通常の自動車のように部品が多く、大量に作れるのであればいいが、電気自動車は部品の点数も通常の自動車に比べて少ない。ただ、Hirikoは、IT技術なども応用した車。部品の製造を通して、技術開発につながるはず」と、佐川さんは話す。

 また、Hirikoは、県内企業の下請け構造からの脱却や海外市場進出など、経済的側面への期待もさることながら、地域の活性化への期待も大きく、現在、新潟市の古町を中心とした町づくり都市型利用、佐渡市での観光での利用などの展開が検討されており、新潟モデルでは、スペインで走っている2人乗りだけでなく、他人数が乗れるバスタイプや、2人乗りのHirikoを列車のようにつなげるなどのバリエーションの展開も視野に入っている。

 Hirikoは、通常の自動車に比べて操作は簡単で「自動車よりもIT機器に近い」とも言い、高齢者や障害者でも簡単に操作でき、移動できるのが特徴。「高齢者、障害者の利用や、商店街で利用することで地域の活性化につながれば。Hirikoのサービスアプリケーションには、道路情報はもちろん、観光情報など、さまざまな情報を得ることができる。Hirikoを町づくりに利用したいというところも増えてくれば」と、Hirikoは社会に新たな視点を生み出す可能性も持っている。     
                                              (石山)
 2013年04月18日春季特集号特集号掲載