ブランド浸透プロジェクト、RITで連携
燕三条のポテンシャルの高さ再確認
ジェトロ新潟・飯田康久所長
 日本貿易振興機構新潟貿易情報センター(ジェトロ新潟)の所長に、9月1日から飯田康久所長が着任した。現在、公益財団法人燕三条地場産業振興センターを中心に、燕三条地域でも海外販路開拓のためのさまざまなプロジェクトを展開中で、「改めてポテンシャルの高さを感じています」と、燕三条地域の可能性を改めて話す。

 飯田所長は、神奈川県出身で昭和47年7月生まれの46歳。東北大学大学院を修了し、平成10年4月に前身の日本貿易振興会に入会。平成14年11月にジェトロ本部で対日投資部の立ち上げに携わり、平成21年5月からはインドのジェトロムンバイ事務所に着任し、燕市の遠藤工業鰍フインド法人の設立の際にも助言を行った。ジェトロ本部総務部、農林水産・食品部などを経て、9月1日から新潟所長を務めている。

 トレードショウや工場の祭典など、着任から燕三条地域ではものづくり関係のイベントが行われたが、改めてイベント、また、企業訪問を通して、「当然ながら、包丁やカトラリーの集積地というイメージはありました。しかし、来てから、それ以上にいろいろなものを作っているんだというイメージを持ちました。つめ切りやコーヒー関連の製品、かんななどもあるし、いろいろと幅広く作っておられるなと。そして、金物のイメージが強かったですが、意外と木材を活用しているというのも新鮮でした」と、イメージを新たにした。

 同時に、燕三条地域のポテンシャルの高さも再確認した。このポテンシャル、飯田所長は「2種類感じている」と話す。1つ目は、それぞれの企業、職人が持つ技術力の高さ。「言うなれば、これが表のポテンシャル、それに対して裏のポテンシャル」と話すのが、歴史の中で培われた技術力を言葉で表現すること。飯田所長は「これ(裏のポテンシャル)がきちっとできたら、燕三条が持つポテンシャルがもっとダイレクトに、東京や海外の人に伝わりやすくなるのでないか」と話す。

 この「裏のポテンシャル」は、そのまま燕三条地域の課題ととらえることもできる。「表現をもっとダイレクトに伝えていくということは、例えば、海外のバイヤーさんの立場に立って考えてみると、バイヤーさんも誰かに売るわけで、売り文句が欲しいんです。その時に、少し使ってみましたというだけでは分からない魅力とか、バックグラウンドがたくさんあると思うんです。それをもっと伝えてほしいと思います」と、刃物などに使われるダマスカス鋼であれば、金属を積層して鍛造する製造方法や、日本刀の製造でも使われた技術であるというストーリーを伝えることで、海外バイヤーからの注目度は高まるのではと、その支援をジェトロとして行っていきたいとする。

 現在、ジェトロが燕三条地域で行っているプロジェクトの1つが、地場産センター、両市と連携し、シンガポールとマレーシアをターゲットに現地市場への燕三条ブランドの浸透を図るプロジェクト。この燕三条ブランド浸透プロジェクトでは、9月18日から21日にかけて、シンガポールとマレーシアの小売業者、卸業者などバイヤー3社3人を燕三条地域に招き、メーカー14社と延べ30商談を行い、この商談だけで、11件、約350万円の成約を見た。今後は、シンガポールやマレーシアでの商談・プロモーションも予定している。

 ターゲットとしてのシンガポールとマレーシアについて飯田所長は、「シンガポールは香港と並んで非常に洗練された市場なので、特に燕三条の洋食器は可能性があるんじゃないかと思っています。買い付けてもらったものであるとか、今後やろうと思っているプロモーションは、現地のジャパンショップで選りすぐりの日本の良いものを発信していこうというコンセプトですので、燕三条の商品はマッチすると思っています。燕三条の高付加価値製品と売場、そして消費者とセットになっているところかと思います」と話す。

 もう1つ、燕三条地域で行っているのが、燕三条地域の金属加工分野で台湾とのビジネス交流可能性を探る地域間交流支援(RIT)事業。今年度は、調査段階で、これまでに3回の研究会を燕三条地域で行い、平行して医療関係クラスターとの連携の可能性を探っている。今後は、関係者の意見や要望も踏まえながら、「来年度の採択に向けて準備を進めていくという段階」とする。

 ジェトロでは、対日投資、外国企業誘致などにも取り組んでいるが、「当面、ジェトロ新潟としては輸出促進に力を入れていきたい」とする。中でも力を入れていきたいとする3つのうちの1つが農産品、食品関係。「新潟県全域にわたる非常に大きな車輪の1つになっています。エダマメとか、スイカとか、ダイヤの原石のような商品がたくさんあります。新潟県は、そこを地産地消で消費していますが、それと同時に、輸出商品として育成する目もあると思っています」と農産品、食品関係の輸出商品化に力を入れたいとする。そして2つ目は、燕三条地域に代表される金属加工。「農産品と金属加工は、新潟県の従業員数であるとか、付加価値生産の観点から見ると、産業の両輪になっています。なので、この2つの取組は外せないと思っています」。

 そして、3つ目については、「東京から見ていても、農産品と燕三条地域の金属加工は非常にイメージしやすくて、よく知られているところでもあります。ただ、意外性がありません。もう1つ、新しい輸出産業になり得る分野を開拓したいなと、第3の柱としてやりたいと思っています」と、今後の動きとして模索していく。             (石山)



 2018年10月25日秋季特集号掲載