岩室温泉
垣根超え、地域に一体感
旅館や店舗に各種団体、手を取り合って
 新潟県新潟市西蒲区の岩室温泉が元気だ。新潟の観光名所として広く知られている同地では昨年、いわゆるバル街イベントの「酒と食のカーニbar」、障害のある人の作品展示をメーンにした「岩室あなぐま芸術祭」といった新企画を打ち出し、温泉街ににぎわいをもたらした。県内外の若手アーティストが集う「いわむロックFESTIVAL」、旅館や店舗などにひな人形を飾る「岩室温泉ひな巡り」といった継続的に行っている催しも盛況。昨年4月に県が発表した新潟県観光地満足度調査では、阿賀野市の五頭温泉郷に次いで県内2位に輝いた。

 目を見張るのが、旅館や店舗、各種団体が垣根を超えて積極的に参画し、地域を挙げて取り組む姿勢。一体感が醸成されているからこそ、新たな企画も打ち出しやすいという。新潟市岩室観光施設いわむろや館長の小倉壮平さんと、各種イベントの企画・運営に携わる鰍qISE.MD社長の藤井篤さんに、話を聞いた。           
                                (山口)

 昨年のひな巡りは、ひな祭りシーズンの2月23日から3月4日まで実施。能面アトリエ「無匠庵」をメーンに計24カ所が展示会場となり、江戸時代中期の享保年間に流行した「享保雛」をはじめ、輪島塗の技法を駆使したものや、つるしびな、土人形、木目込人形など多種多彩なひな人形が温泉街を飾った。展示のほかにも、参加店舗がひな祭りの要素を盛り込んで仕上げた「ひなランチ」、お土産としての「ひなギフト」を用意するなど、趣向を凝らした。

 アートに焦点を当てたあなぐま芸術祭は9月1日から9日まで行い、展示会場は計13カ所。特別支援学校や中学校の特別支援学級の生徒、障害者福祉施設の利用者など、西蒲区内外から幅広い世代の力作120点超が集まり、ジャンルは絵画を中心に陶芸、書などバラエティー豊か。展示場所は作品それぞれの魅力が一層発揮されるところを選び、見せ方も工夫した。


 あなぐま芸術祭は「風穴を開けること」がテーマで、実行委員会事務局長を務めた小倉さんは、「障害のある人とない人との間に見えない壁があるなら、そこに風穴を開けたい」と話す。今秋の全国障害者芸術・文化祭にいがた大会、そして来年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えた取り組みでもあり、地域福祉と観光を結びつけていくための、斬新なアイデアが光った。

 最も集客力のあるイベントと言えるいわむロックは、昨年は9月23日と24日の2日間行い、長岡市の高校生シンガーソングライター・琴音さん、テレビ新潟の「夕方ワイド新潟一番」テーマソングを手がける岡村翼さんなど37組が出演。来場者数は約9000人に上った。誰もが知るビッグネームと言うよりも、現在売り出し中の新進気鋭の若手がこぞって出演する、若いエネルギーにあふれた音楽フェスだ。

 同月29日に開催した「酒と食のカーニbar」には26店舗が参加。お土産も含め、各店舗の持ち味、個性にあふれた飲食メニューはもとより、岩室芸妓(げいぎ)の踊り鑑賞、マッサージなども用意し、岩室温泉街に根付く伝統文化を肌で感じてもらえるようにと企画した。当日は4枚つづりのチケット約400冊が売れる盛況で、「大勢の方々の往来が目に見えて、中には『昔の岩室が戻ってきた』なんて感想をお持ちの方もいらっしゃいました」と藤井さん。

 同温泉街は、「端から端まで、20分もあれば歩いて行ける」ほどのコンパクトさ、回遊性が大きな魅力。イベントではそのような利点を生かし、参加者が気軽に、より多くの旅館や店舗に足を運べる、運びたくなるような工夫を凝らしており、「個別のお店を見てもらいたいという気持ちが強いですし、そうやって街歩きしていただきたい」と願う。各種イベントでは、それぞれの分野の専門家を中心に実行委員会を組織し、フットワークよく活動している。昨年初開催のあなぐま芸術祭、酒と食のカーニbarも継続して実施していく方針だ。

 いわむろやが開設された2010年ころは、「今ほどの一体感はなかった」というが、さまざまな取り組みを進める中で、少しずつ現在の形が作られていったのだという。現在いわむろやに展示されていることしの干支・イノシシのわらアートも関心を集めている岩室温泉。小倉さんと藤井さんは、「私たちは、言わば『縁の下』チーム。そうやって、地域づくりに関わっていきたい」と意気込む。


 2019年1月4日冬季特集号掲載