秋には新病院開院控えて
地域と病院つなげて
設立20年県立加茂病院 「患者と家族の会」
 平成11年2月、新潟県当局が県立加茂病院の縮小を発表したことを受け、故・丸山正二さんを代表に設立された、当時の入院患者などを中心とした市民有志からなる県立加茂病院「患者と家族の会」が、昨年、設立20周年を迎えた。

 加茂病院縮小反対を訴え「加茂病院を守れ!」と声高に叫び誕生した同会は、それ以来、草の根活動を通じて、平成18年には、当時の泉田裕彦県知事が県内の2次医療圏の再編案を示したことを受け「加茂・田上地域医療を発展させる会」を通じて、街頭署名と各自治体への要請活動を展開。その後、県央医療圏は存続し、県央基幹病院建設への道筋ができた。また、平成27年には、加茂病院の全面改築が決定し、その基本計画案が県から示されたものの、加茂市の小池清彦市長が「病児・病後児保育施設を新病院内に設置すること」、「産科個室20室を整備すること」の2点で譲らず、県と対立したときには「新加茂病院の早期着工を求める会」を結成。署名活動を展開し、加茂市、県の双方を訪れて早期解決を求めた。

 そして、ことしは新加茂病院がお披露目となり、同会にとっては昨年の20周年と合わせて大きな節目を迎える年となる。

 これまでの経緯と今後の同会のあり方について、杉田三二代表に話を聞いた。        
                             (細山)

  現在、患者と家族の会の主な活動は、同病院の医師を講師に迎えた講座やミニ集会を定期的に行うほか、年に4回、会報「日々草」を発行している。また、平日には病院でボランティア活動を実施し、来院者の補助や案内などを行っている。

 周年記念では記念講演会や記念シンポジウムなどを開催しており、昨年10月31日に加茂市中央コミュニティーセンターで開かれた設立20周年記念講演会では、同病院の秋山修宏院長を講師に招き、120人以上が参加した。

 杉田代表は、20年を振り返り2つの出来事を挙げる。1つは設立した平成11年のできごと。2月の設立からおよそ半年が経った9月に、加茂市民体育館で「加茂病院縮小反対住民大集会」が開かれ、加茂市や田上町から2000人の市民が駆け付けた。両市町の人口比からは異例の盛り上がりとなり、現在の活動の原動力にもなっている。杉田代表は「昭和24年の(加茂病院)設立からそれまでなかったことだった」と話す。そのときは、一般病床150床、療養病床30床で決着した。

 もう1つは、平成27年の「新加茂病院の早期着工を求める会」を立ち上げたとき。設立以来、「加茂病院は加茂市の宝」と公言し、同じ目的のために強力に会を後押ししていた小池市長の要望が県病院局に聞き入れられずに、計画そのものが頓挫しかけたときだ。「どたばたした、という意味では、あのときでしょうね」と杉田代表。「あのときは、圧倒的に市民からの要望が『県の案でいいんじゃないか』、『早く建ててくれ』でした。結成ひと月で1万1000くらいの署名が集まり、力になりました。小池市長は20年から加茂病院のためにがんばってくれている方。ただ、県の計画も煮詰めてきたもので、それで十分だと思いました。そうした圧倒的な地域の声が大きかった」と話す。結果、小池市長が求めた病児・病後児保育施設は院内には整備できなかったものの病院の隣接地に建て、アーケードで接続することで決着。産科の問題については、今後の動向を見ながら検討することで落ち着いた。産科については今後の需要を見越した上で増設の可能性を残した。

 この20年間の活動で、杉田代表が肌で感じたのが、「民営化」の大きな流れだ。「5周年記念講演会で、当時の青柳春樹医師会長がおっしゃられていました。基本的には民営化の流れがあります。加茂病院もそうです。その民営化の大きな流れの中で縮小案が出てきました。考えてみると地域の医療の拠点である県立病院を民営化することが正しいかどうか。そこに基本的な問題があるように思います」と話す。それは現在も当てはまる。公設民営方式の魚沼基幹病院は財政状況が芳しくなく、十日町市の中条第2病院では入院病棟を年度末に閉鎖する。医師不足の影響もあり、採算性のみが問題ではないが、いずれにせよ民営の病院には、「採算が悪化したら撤退するのではないか」というリスクが付きまとう。

 また、ことしは新加茂病院がお披露目となる。秋山院長の講演によれば、4月には建物が県に引き渡され、それから新導入の電子カルテのテストなどを行い秋には開院する運びとなっている。「いよいよ新しいところになります。予定通りに進んでいくと思いますし、ある意味でとても楽しみですね」と杉田代表。「今後は、ソフトの面で医師や看護師をいかに確保していくか。私たちの立場を考えると、これからはそうしたさまざまな地域医療の問題の中で、加茂病院が開院し、地域医療の中核施設のモデルになります。その意味で、どう取り組んでいくのか。具体的な部分でこれから私たちの中でも課題が出てくると思います。高齢化が進む中で、地域住民がどうやって医療の末端に関わっていくか。新しい病院には多目的ホールもあります。それもどう使っていくのか興味があります」と話す。

 会員数は、当初は100人ほどだった。高齢者が多く、亡くなる人もいる中でも、着実に規模を拡大し、現在は会費を払っている人は150人を超えた。これは加茂病院に対する地域の期待の表れでもある。「それだけ地域のみなさんには関心があるということです。でも、それだけではいけないんです。各町内からどんどんつながりが消えていく中で、病院に限らず地域での集会や健康講座をやっていきたい。1つの行事で終わらせるのではなく、それを地域のつながりにしていかないといけない」とし、今後も市民と加茂病院の橋渡し役として取り組んでいくことを誓った。

 2019年1月4日冬季特集号掲載