あらゆる産業に欠かせない段ボール
森井紙器工業㈱創業100周年・社長インタビュー
 新潟県燕市を拠点に、農商工のあらゆる産業から日常生活まで現代の物流に欠かすことのできない梱包用段ボールケースのメーカー、燕市吉田下中野、森井紙器工業㈱は、今年1月8日に創業100周年を迎えた。

 戦前の1919年、当時の地域地場産業の代表的な製品である煙管(キセル)やヤスリ、茶こしなどを収める紙箱の製造からスタートした同社は、戦後、段ボールメーカーに転換、地域の産業を物流の面から支えてきた。

 また、近年はいち早くISOを取得し、燕市の実施する、社屋や工場などの屋根を貸してくれる市内企業と、屋根で発電事業を行いたい発電事業者を同時に募集しマッチングを行う「燕子ども応援☀おひさまプロジェクト」にも積極的に参加しているほか、昨年は、市内で人気テレビドラマ「下町ロケット」の大型ロケが行われことから、ドラマや地域を盛り上げようと、劇中で重要な役割を示したトラクターの原寸大の段ボール模型を製作。体重80キロ以下の人なら乗車できるもので大きな脚光を浴び、図面のない中で精巧な大型モデルを生み出す設計技術も脚光を浴びた。

 100周年を迎えるにあたり、同社の4代目・森井康社長に知っているようで知らない段ボール業界の実情と同社の沿革、次の100周年に向けた思いを聞いた。                 (細山)

 段ボールは1800年代にイギリスで誕生した。当初は、梱包用ではなくシルクハットの内側の汗を吸い取るためのものだったが、やがてアメリカで梱包用に使われるようになった。日本では、同社の創業10年前の1090年に製造が始まった。ことしは、日本で段ボールの製造が始まってから110周年でもある。

 ボール紙などを使った紙箱の製造販売からスタートした同社は30年後の1949年に「森井紙器製作所」と法人化し、段ボールによる箱の製造に進出した。「ものづくりをする場所では、当然のように必要とされる業種なんです。メーカーさんは出荷するわけですから、木箱や包むものが必要になるわけです」。

 そして、1966年に段ボール専業の吉田工場を新設し、今の屋号になったところで大きな転機を迎える。

 「段ボール産業の躍進は1950年代ころなんです。国が主導して、それまでの木箱から段ボールに切り替える流れが起きたからです」と森井社長。

 戦後の高度成長の中で、木材や金属などの資源を使い重量のある木箱からの転換は、まさに時代の流れだった。折しも日本は戦後の高度成長の真っただ中。燕市の金属洋食器製造をはじめ、全国的に物流量も増えていく時代だった。

 同社もその流れの中で着実に力を蓄えていく。「段ボール箱は段ボールのシートでできています。最初は自分たちでシートを作る設備がなかったんです。シートを仕入れて加工するボックスメーカーとしてスタートしましたが、1980年の10月、吉田の団地に出てきて、3代目である父が『これからは一貫メーカーとしてやっていかないと競争には勝てない』と考え、川中から川上にも進んだんです」。

 段ボール業界は国内でスタートして110年が経ち国として産業構造が変化しても安定感は変わらない。農産物の出荷から家電製品の梱包まで、いまだに段ボール以上の素材は見当たらない。「調べたのですが、GDPと段ボールの製造量はほぼリンクしているんです。日本経済の発展に段ボールは付いて回ったんです」と話す。1960年代以降では、オイルショックとリーマンショックで少し落ち込んだものの、それ以外は常に安定した成長を見せている。

 リサイクルシステムが極めて整っており、国内では95%が使用後に回収され、そのうち92%が段ボールとして再生される。また、軽量で運送コストの削減にも貢献する。「エコ」の視点でも優等生だ。「日本は紙資源のない国なので再生技術を上げてきたんでしょうし、みなさんも畳んで古紙回収に回すのが定着している。循環型の産業になっているんです」。加えて、梱包資材としては、軽さだけでなく強度や安全性に優れ加工も容易で、「今は代替品がないのです」。

 多くの分野で利用されるため、当然、求められる形状や品質も変わる。「段ボール箱に入るものは多種多様です。輸送の手段や状況も違います。振動も湿度も経過時間もそうです。いろんな条件で計算しておかないといけない」と森井社長。

 そのため、同社には設計専門のチームもある。その設計開発力は同社の強みでもある。「巻き紙だけでもすごい種類があって、どういう組み合わせがいいのか考えるし、その検査基準もあります」と話す。その技術力は、下町ロケットの段ボールトラクターが如実に示す。ドラマ放映前に水面下で制作したため、資料や図面も一切存在しない中で、模型や現物を参考に大人が実際に乗れる強度を保ちながら精密に作り上げた。「ミニチュアを買って分解して図面を作りながら作りました。部品点数も200点以上あります」と森井社長も胸を張る。

 さらに同社では、4つのグループ企業と連携し、多品種少ロットの製造や組み立て、輸送、段ボールへの印刷など多様なニーズにスピーディーに取り組める組織づくりを進めている。製薬メーカー用には防虫防塵ルームも整備した。入れるものの数だけ要求はある。
 現在、段ボール産業のトレンドは軽量化。「強くて軽くて紙をあまり使わないものです。形状も変わってきます。それに、もう大量に作っていく時代ではないので多品種少ロットも重要です」。

 加えて、今は梱包以外のニーズも大きい。災害時のパーティーションやベッド、ゴミ箱など避難所生活のQOLに関わるもの、玩具類、さらにはスーパーの陳列用ディスプレイなど多岐にわたる。

 100周年の節目にあたり、森井社長は「偶然ですが元号も変わります。いろいろ変化が速くなってくると思います。必要とされるものは変わり、消費者が購入する手段も変わり、決済の方法も変わります。その中で、梱包のニーズも変化しています。その変化を見逃さずに経営していきたいです」と話す。「僕らは主役じゃなくて黒子なんです。僕らが先に走るのではなく、先に走っているものをバックアップしていかないといけない。『こういうものが欲しい』、『これがあれば便利』というメーカー、さらにその先にいる小売店が何を求めているのかきちんと把握した上で提案していきたいです」とし、県内の独立系段ボールメーカーのリーディングカンパニーとしての躍進を誓っていた。
 

 2019年1月4日冬季特集号掲載